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五月病を防ぐための漢方的対策

2026.05.12

新年度や新生活が始まって1か月ほど経った5月。ゴールデンウィーク明けから、「なんだか体が重い」「やる気が出ない」「仕事や学校に行くのがつらい」と感じることはありませんか?それはもしかすると「五月病」かもしれません。

五月病は強いストレスや環境変化によって自律神経や心のバランスが乱れた状態であり、放置すると適応障害やうつ病へ進行することもあります。

今回は、五月病の原因と対策について中医学の視点を踏まえて解説します。

五月病とは

五月病とは、新しい環境への適応によるストレスや疲労が蓄積し、心身に不調が現れる状態を指します。正式な医学用語ではなく、いわゆる「適応障害」の一種と考えられています。

4月に入学や入社、人事異動などで環境が大きく変わると、誰でも多少の緊張やストレスを感じます。環境の変化は大きなエネルギーを消費し、脳や自律神経に大きな負担をかけます。しかしながら新しい環境に慣れるまでは気を張っているため、すぐには不調として表れにくいものです。

ゴールデンウィークという「休息」をきっかけに、反動で一気に疲れが表面化した状態が五月病です。実際には、軽度のうつ状態や自律神経失調などが背景にあることも少なくありません。

五月病の症状

五月病では、心だけでなく体にもさまざまな症状が現れます。

 精神面の症状

  • やる気が出ない:「何もしたくない」「会社や学校に行きたくない」と無気力に感じることがあります。以前は楽しめていたことにも興味が持てなくなることがあります。
  • 気分の落ち込み:漠然とした不安感や憂うつ感が続くことがあります。特に夜になると気分が沈みやすくなります。仕事や勉強に集中できず、ミスが増えたり、頭が回らない感覚が出ることがあります。
  • イライラしやすい:ストレスによって心の余裕がなくなり、小さなことで怒りっぽくなることがあります。
  • 不安感:「この先うまくやっていけるのか」「自分はダメだ」といった漠然とした恐怖や焦りを感じることがあります。

 身体面の症状

  • 強い疲労感:十分寝ても疲れが取れない、朝からだるいという状態が続くことがあります。
  • 睡眠障害:寝つきが悪い(入眠困難)、夜中や早朝に目が覚める(中途覚醒・早朝覚醒)、眠りが浅いといった不眠と、逆に眠り過ぎてしまう過眠の症状が見られることがあります。睡眠の質の低下により、夜寝ても日中に眠いことがあります。
  • 食欲低下・胃腸症状:ストレスは胃腸にも強く影響します。食欲不振、胃もたれ、吐き気、下痢・便秘、腹部の張りが代表的な症状です。
  • 頭痛・肩こり:ストレスや春の寒暖差が原因となり自律神経が乱れることで、筋肉の緊張や血流が悪化し、頭痛、首肩こり、頭の重たさといった症状が出やすくなります。
  • 動悸・息苦しさ:不安や自律神経の乱れによって、胸の圧迫感や動悸を感じる人もいます。

五月病の原因

五月病は単純な「気の持ちよう」ではなく、さまざまな要因が重なって起こります。五月病による心や体の症状について、自律神経やホルモンの働きから解説します。

 自律神経の乱れ

自律神経には、活動時に働く「交感神経」と、リラックス時に働く「副交感神経」があります。

新生活では緊張状態が続き、交感神経が過剰に働きやすくなります。すると体が常に“戦闘モード”になり、心拍数増加、筋肉の緊張、胃腸機能低下、呼吸の浅さなどが起こります。

この状態が長引くと、今度は自律神経がうまく切り替えられなくなり、疲れているのに眠れない、休んでも回復しない、朝から体が重い、少しのことで強く疲れるといった状態になりやすくなります。

また春は、寒暖差や気圧変化も大きく、自律神経に負担がかかりやすい季節であることも五月病の原因となっています。

 ストレスホルモン(コルチゾール)の影響

ストレスを受けると、体では「コルチゾール」というホルモンが分泌されます。コルチゾールは本来、ストレスへの対処、血糖維持、覚醒状態の維持、炎症の調整など体を守るために必要なホルモンです。

しかし、慢性的なストレス状態が続くと、コルチゾールが過剰に分泌され続け、脳や自律神経に大きな負担をかけます。すると、寝つきが悪い、夜に頭が冴える、イライラしやすい、不安感が強くなる、胃腸の調子が悪くなる、疲れが抜けないなどの症状が現れやすくなります。

また、強いストレスが長期間続くと、コルチゾールの分泌リズムそのものが乱れることがあります。本来コルチゾールは、朝に高くなり(活動するため)、夜に低くなる(眠るため)といったリズムを持っていますが、これが崩れることで五月病に見られるような「朝なのに体が動かない」「日中ずっとだるい」「夜になると逆に眠れない」といった状態になることがあります。

さらに、長期間ストレスに晒されると、最初は高かったコルチゾール分泌が徐々にうまく反応しなくなり、“燃え尽きたような状態”になることもあります。

 脳内ホルモン

慢性的なストレスは、脳内の神経伝達物質(脳内ホルモン)にも大きく影響します。特に、以下の物質の働きが乱れることで、五月病の症状が起こりやすくなります。

  • セロトニン:心の安定・安心感に関わる
  • ドーパミン:意欲・やる気・達成感に関わる
  • メラトニン:睡眠に関わる

セロトニンは精神の安定だけでなく、自律神経の調整にも深く関わっています。ストレスや睡眠不足、日光不足によってセロトニンの働きが低下すると、不安感や落ち込みが強くなりやすくなります。

また、ドーパミンは「やる気」や「報酬系」に関わるため、慢性的なストレスで働きが低下すると、何も楽しめない、興味がわかない、行動する気力が出ないといった状態につながることがあります。

さらに、メラトニンは夜になると分泌される睡眠ホルモンですが、ストレスや夜更かし、スマホの光などによって分泌リズムが乱れると、寝つきが悪い、夜中に目が覚める、朝起きられないといった睡眠障害が起こりやすくなります。

五月病になりやすい人の特徴

五月病は誰にでも起こり得ますが、特に「頑張りすぎる人」ほど注意が必要です。

 真面目で責任感が強い人

「周囲に迷惑をかけたくない」「早く仕事や学校に慣れなければ」と、自分にプレッシャーをかけやすい人は、無理をしてしまいがちです。

また、責任感が強いために「失敗してはいけない」「ちゃんとやらなければ」と常に緊張しやすい傾向があります。小さなミスでも自分を責めやすく、脳や自律神経が休まりにくいため、疲労感や気分の落ち込み、不眠につながることがあります。

 気を遣い過ぎる人

「嫌われたくない」「空気を悪くしたくない」と気を遣いすぎる人も、精神的なエネルギーを消耗しやすくなります。

新しい人間関係では特に緊張が続きやすく、本音を我慢して一人で抱え込んでしまう人も少なくありません。

 環境変化が苦手な人

環境変化に敏感な人は、新生活だけでも大きなストレスになりやすく、人一倍エネルギーを使います。新しい場所や人間関係に慣れるまで時間がかかるため、知らないうちに強い疲労が蓄積していることがあります。

 休むのが苦手な人

疲れていても無理を続けたり、休日も仕事や勉強のことを考えてしまう人は、脳や自律神経が休まりにくくなります。特に睡眠不足や夜更かしが続くと、ストレスホルモンや脳内ホルモンのバランスが乱れ、疲労感や気分の落ち込みを悪化させやすくなります。

中医学的な原因と対処法

中医学では、五月病はストレスによる「気」の巡りの乱れや、気血の消耗が関係すると考えます。

 肝鬱気滞(かんうつきたい)

ストレスを受けて「肝」の気を巡らせる働きが失調した状態です。イライラや抑うつ、ため息、お腹や脇の張り、便秘・下痢、生理不順などの特徴がみられます。気の巡りを改善する理気薬を用います。

漢方:逍遥散、香蘇散、半夏厚朴湯など

 脾気虚(ひききょ)

精神的な疲労・無力感、息切れなどとともに食欲の低下、食後にお腹が張る、食後の眠気、軟便・下痢などの特徴が見られる状態です。脾の働きを高め、心と体の活力を増やす漢方を用います。

漢方:補中益気湯、六君子湯、参苓白朮散など

 肝気虚(かんききょ)

「肝」の働きには気血を伸びやかに上向き・外向きへと巡らせる「昇発作用」があります。ストレスを受け続けて肝気が弱ることで、やる気が出ない、疲れやすい、行動力・決断力が落ちる、気分の落ち込み、朝起きにくいなどの症状がみられます。肝気を高める漢方を用いて、意欲的に考え行動する力を補います。

漢方:雲芝、刺五加など

 気血両虚(きけつりょうきょ)

気が不足するとやがて全身に栄養を与える血も不足しやすくなります。このタイプは、不安感、情緒不安定、考えがまとまりにくい、顔や髪にツヤがなく、顔色が白い・または黄色い、眠りが浅い、抜け毛が多い、動悸がする、生理周期が遅くなりやすいといった特徴がみられます。気血を同時に補う漢方を用います。

漢方:帰脾湯、婦宝当帰膠、十全大補湯など

まとめ

五月病は、新生活によるストレスや疲労が積み重なり、心と体のバランスが崩れた状態です。単なる「甘え」ではなく、自律神経や脳疲労、ストレス反応が深く関係しています。

中医学でも、ストレスによる「気」の巡りの乱れや、エネルギー不足が背景にあると考えられています。

大切なのは、「頑張り続けること」ではなく、早めに休息を取り、軽い運動やストレス発散を取り入れながら心と体を整えることです。新生活の疲れは、誰にでも起こり得るものです。無理をしすぎず、自分の心と体のサインに耳を傾けることが大切です。

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