忙しい現代では夕食が遅くなることも珍しくありません。残業で帰りが遅くなる大人もそうですが、体が発達していない学生までもが塾や習い事で遅くなってしまうのは、仕方がないこととはいえ負担が大きい生活習慣です。
疲れが取れないだけでなく、睡眠不足や生活リズムの乱れが続くことで、朝に起きづらさや起立性調節障害の症状がみられる場合もあります。
今回は、なぜ夕食が遅くなると疲れやすくなるのか、そして中医学的な対処法について解説します。
なぜ遅い夕食で疲労感が出るのか
私たちの体には体内時計(概日リズム)があり、日中は活動に適した状態、夜は休息に向かう状態へと切り替わっていきます。
夜間は体が休息モードへ切り替わるため、日中と比べて消化機能も穏やかになります。
結果として、翌朝の疲労感、食後のだるさ、強い眠気、胃もたれなどが起こりやすくなります。
夕食は何時頃が好ましいか
遅い夕食が疲労を招くのは前述した通りですが、では夕食は何時頃が適正なのでしょうか?
(1)病院での食事時間を参考にすると
入院患者さんの回復を支える病院において、厚生労働省の入院時食事療法の基準では、夕食は18時以降とすることが望ましいとされています。
早めの夕食にすることで、以下のような利点があります。
- 睡眠時の胃腸への負担が少ない
- 血糖値が安定しやすい
- 睡眠の質を保ちやすい
また、病院の消灯時間は21時頃ですが、18時頃までに食べることで、以下のようなメリットがあります。
- 食後約3時間は起きていられる
- 胃の内容物がある程度十二指腸へ送られる
- 逆流や胸やけのリスクが減る
(2)不調が出やすい時間
病院のように18時頃に食事が取れれば問題はありませんが、それが難しい方も多くいらっしゃいます。臨床でご相談を受けていると、胃腸の強さには個人差があるものの、夕食が20時以降から「翌朝疲れが取れない」「朝起きづらい」といった症状が増える印象があります。
中医学的な疲労の原因は「食積」
中医学では、食べ物を気や血に変える役割を「脾胃(ひい)」が担うと考えます。食事が遅くなり、就寝するまでの時間が短くなると、食べ物を十分に消化できず、胃腸に停滞することで「食積」という状態になります。
この食積が脾胃の働きをさらに低下させることで、気や血が十分に作られず、疲労感や朝のだるさに繋がると考えます。
中医学的な対処法~消導薬の活用~
食積による疲労感に対して、中医学では「消導薬(しょうどうやく)」を用いることがあります。消導薬とは、停滞した食べ物の消化を助け、胃腸の働きを助ける生薬のことです。
代表的な生薬は、以下の通りです。
- 山査子(さんざし)
- 神麹(しんきく)
- 麦芽(ばくが)
- 莱菔子(らいふくし)
これらは食積による、以下のような症状に用いられます。
- 胃もたれ
- お腹の張り
- 食後の倦怠感
- 消化不良
特に「夕食が遅くなった翌朝に疲れが取れない」という方は、夕食後に消導薬を用いることで、消化の負担を軽減できる場合があります。
疲労を防ぐための生活習慣
消導薬だけでなく、生活習慣の見直しも重要です。
(1)できれば20時までに夕食を済ませる
理想は就寝の3時間前までに食事を終えることです。
(2)夜は腹八分目を意識する
遅くなる日は特に食べ過ぎを避けましょう。
(3)温かい食事を中心にする
冷たい飲食物は胃腸を冷やし、消化の負担を増やすことがあります。
どうしても食事が遅くなる場合は、20時までに軽い食事を済ませ、帰宅後は野菜スープなどで消化の負担にならない食事を取るのがお勧めです。
改善例
高校3年生の女子。
塾で帰りが遅く、夕食は毎日21~22時頃になっていました。元々、食が細いタイプでしたが、最近は以下のような症状を感じていました。
- 朝起きるのがつらい
- 日中の倦怠感
- 食後の眠気
そこで夕食後に消導薬を用いるとともに、塾前に軽食を摂り、帰宅後は軽めの食事に変更したところ、翌朝の疲労感が軽減しました。
学生だけでなく、仕事で帰宅が遅くなる社会人でも、同様の工夫で体調が改善するケースは少なくありません。
※改善には個人差があります。
まとめ
夕食が20時を過ぎると、以下のような要因によって疲労感が生じやすくなります。
- 消化能力の低下
- 胃腸への負担増加
- 食積の形成
このような状態は単なる疲れではなく、胃腸が食べ物を十分に処理しきれないことが関係している場合があります。そのため、胃腸への負担を減らすことが改善に繋がることがあります。
食後のだるさや翌朝の疲労感が気になる方は、「何を食べたか」だけでなく「何時に食べたか」にも目を向けてみてください。
仕事や塾の時間をすぐに変えることは難しいかもしれません。しかし、食べる時間や食事の内容を少し工夫するだけでも、翌日の体調が変わることがあります。無理のない範囲で胃腸をいたわる習慣を取り入れ、必要に応じて漢方薬を上手に取り入れるのも一つの方法です。
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