「できればステロイドは飲みたくない」
「ムーンフェイスや不眠などの副作用が怖い」
ステロイドを内服する場合、これからどのように体調の変化が起きるのか心配だという方は多くいらっしゃいます。ステロイドは強力かつ効果的な薬であり、必要な時には躊躇せずに服用すべきですが、どうしてもその副作用が気になります。
ステロイドの副作用を中医学的に考えた場合、火照りを代表とする「陰虚」に傾くという意見と、冷えを代表とする「陽虚」に傾くという意見があり、全く方向性が異なる見解があります。
ステロイドの作用を改めて考えることで、中医学的にどのような変化をもたらすか解説していきます。
ステロイドとは
飲み薬で最も広く一般的に使われているステロイドはプレドニゾロン(商品名:プレドニン)です。副腎皮質ホルモン「グルココルチコイド」の一種で、体内で作られる「コルチゾール」と似た作用を持つ合成ステロイドです。
グルココルチコイドは、私たちが強いストレスに晒された時に副腎皮質から分泌されるホルモンです。つまり、ステロイド薬とは「生存のための緊急ホルモン」を外から補っている状態だと言えます。
ここで、一見矛盾するこのホルモンの性質を見てみましょう。
①糖質コルチコイド作用
血糖値を上昇させ、エネルギーを筋肉や脳に供給する(身体を戦闘モードにする)働きです。
②抗炎症・免疫抑制作用
炎症を抑え、免疫の働きを鎮める働きです。
一見すると「エネルギーを動員する(興奮させる)」ことと「炎症を鎮める(抑える)」ことは真逆に思えます。しかし、これは命の危機における身体の優先順位を考えれば納得できます。
危機的状況(外敵との遭遇など)で必要なことは、「闘うか、逃げるか」です。身体はエネルギーを全てその行動に集中させるため、炎症(治癒プロセス)や免疫活動といった「長期的なメンテナンス」に回す余力を削ります。このエネルギー動員と炎症抑制という異なる働きを併せ持っていることが、ステロイドの副作用を複雑にしています。
ステロイドの中医学的性質
ステロイドの本来の働きを考えると、中医学的には「外部から腎陽(陽気)を補う薬」だと捉えられます。
本来、腎陽とは生命の火のようなもので、ストレスに対抗する力の源です。ステロイドはその火を外部から急激に焚きつける作用があります。同時に「糖質コルチコイド」という名前が示す通り、脾(消化吸収機能)が作り出した「水穀の精微(栄養)」を強制的に血糖として動員するため、「脾の働きを超えた強制的な気の動員」とも解釈できます。
ステロイドを服用すると体内では、陽気が急激に亢進します。この状態は「真陽(本当の自分の力)ではなく、仮の陽気(壮火)が昂っている」と解釈できます。
人体にとって不要な熱である「壮火」は生命活動に必要なエネルギーと体液を消耗させ、心身の不調の原因となります。
副作用のメカニズム
ステロイドを服用すると、陽気が強くなることで、初めに「顔のほてり」「不眠」「イライラ」「血糖値上昇」といった、「陰虚火旺」と呼ばれる状態を引き起こしやすくなります。
さらにステロイドを長期間使用すると、身体は「外部から陽気が供給され続けている」と判断し、自ら腎陽を産生するエンジンを停止させてしまいます。これが「副腎皮質の機能低下」のメカニズムです。
外から補われている間は元気ですが、その陽気は「借金」のようなもの。自分の腎陽は休んでいる(あるいは萎縮している)ため、ステロイドを減量すると一気に「腎陽虚」の状態、つまり生命活動の低下(倦怠感、無気力、低血圧など)に陥ります。
ステロイドの副作用は「陰虚」になるか「陽虚」になるかではなく、「初めは陰虚になりやすく、長期間服用するとやがて陽虚になる」ということになります。
漢方の有効性を示す研究
漢方薬には内分泌機能を高める補腎薬という種類があります。では、「補腎薬でステロイドによる副腎機能低下を予防・改善できるのか?」という疑問に対して、中国では多くの研究が行われています。
プレドニゾロンと漢方方剤の併用療法とプレドニゾロン単独療法を比較した実験では、併用療法では再発率と副作用を有意に低下させたという研究があります。これらの研究では、山茱萸、地黄、淫羊藿、女貞子など補腎作用を持つ生薬が多数含まれていたそうです。
漢方薬で副作用対策する場合には、ステロイドの量や服用期間、体質に合わせて補腎薬の種類を選ぶ必要があります。また、ステロイド服用中に起こる不眠やイライラ、過食、むくみなどの副作用については、補腎薬以外の漢方薬でサポートすることが可能です。
まとめ
ステロイドは、エネルギー動員(陽)と炎症抑制(陰)という二面性を持った薬です。ただし、本来の自然な体の働きとは異なる急激な作用を持っており、服用を続けることで体内の陰陽バランスが崩れてしまうことに繋がります。
漢方薬は副作用対策として一定の効果が期待できます。しかし、それだけでは十分ではなく、最も重要なステロイド対策は「時間をかけながらも順調にステロイドの量を減らすこと」です。そのためには、免疫が昂っている原因を取り除き、免疫調節作用を持った漢方薬を併せることが必要です。
ステロイドの副作用でお悩みの場合は、漢方薬でサポートすることをご検討いただければ幸いです。
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