病院のがん治療と並行しながら、漢方薬による体質改善を目指してお客様が相談に見えられます。
そこで、病院治療と漢方を併用する場合の注意点と、お勧めの漢方薬について解説します。
目次
- 漢方治療の原則
- よく使われる商品と注意点
- がん治療中に使われる漢方薬
- 漢方専門店の漢方薬
- 症例
- まとめ
1.漢方治療の原則
どのような病気や症状であれ、漢方治療には「扶正袪邪」という基本方針があります。それはがんに対してであっても同じです。この「扶正袪邪」というのは、体力や自然治癒力を高める「扶正」、病気の原因となる邪気を除去する「袪邪」という2つの要素から成り立ちます。
がんの治療で放射線療法や抗癌剤投与を受ける際、漢方でできることの多くは「扶正」に対するサポートです。がんを攻撃する「袪邪」については病院の治療にお任せし、漢方は体の体力や自然治癒力を底上げする「扶正」に集中し、副作用の軽減やQOL(生活の質)の改善を目指します。
この「扶正」に関しては病院の治療は苦手な分野ですが、がんの治療で最も避けたいのは体力がなくなって治療を続けることができなくなることであり、ここに対して漢方薬を活用することができます。
「袪邪」についても漢方薬で対処することはできますが、それでもあくまで標準治療の補助として活用するのが望ましいというのが私の考えです。
2.よく使われる商品と注意点
漢方店でがんに対してよく使うのは「きのこ系」の健康食品です。
しかしながら、最近はこうした健康食品を病院で認めない事例が増えてきています。
きのこには、βーグルカンという食物繊維の一種が含まれていて、免疫細胞を活性化させることが分かっています。また、漢方的にもきのこは消化器の働きを整え、エネルギーである気を補うとされています。この気の働きには現代でいう免疫が含まれているものだと思われます。
こうした働きを踏まえると、きのこ系の健康食品を使う意味というのは十分にあるように感じますが、それでもきのこ製剤を始めとした健康食品は病院では飲まないように指導されることが多いのです。
3.がん治療中に使われる漢方薬
それでは、漢方店でがん治療中に何がお勧めできるかですが、病院の先生から許可を得やすいのは、やはり医薬品として効能効果が認められたものです。
実際の所、病院でもQOL(生活の質)の改善を目的に保険適応の漢方である補中益気湯や六君子湯、十全大補湯、人参養栄湯などを処方されることがあります。
これらの漢方には病後の体力低下や食欲不振などの効能があり、簡単に言えば体力をつける処方になります。他にもビタミン系のサプリや必要だと思われる一般用医薬品については、許可されることが多いようです。
4.漢方専門店の漢方薬
(1)保険適用の漢方にない生薬
保険適用の漢方薬以外でも、専門店だからこそ取り扱いがある商品があります。
病後の体力低下という記載がある漢方薬の中で、鹿茸(ろくじょう)や蛤蚧(ごうかい)、冬虫夏草(とうちゅうかそう)といった生薬が入っているものは、やはり他の漢方薬にない効き目があります。
(2)免疫と密接な「脾・肺・腎」
現代でいう免疫というのは、漢方では主に「衛気」というエネルギーが担っています。衛気は「脾(胃腸)」によって食べ物から栄養を吸収することによって補われ、「肺」に送られた後に全身を巡ることによって作用します。そして身体の根本である「腎」の働きが衛気を下支えします。
漢方では五臓の働きによって人体の活動が成り立つと考えますが、免疫を働かせるのは主にこの三蔵です。
当店でお勧めしている漢方薬では、「脾」を補う生薬(人参、黄耆、白朮、山薬など)がたくさん含まれているため、食べ物から栄養を吸収する力を補うことができ、胃腸が弱い方や食欲がない方にもお勧めできます。
この漢方薬には鹿茸(ろくじょう)という生薬がとても多く含まれていますが、生命エネルギーの根本である「腎」を補う代表的な生薬です。中国の研究では抗腫瘍作用や抗炎症作用の他に、NK細胞を活性化することで免疫機能を向上させることが認められています。名前に茸と付いていますが鹿の角の先端部分のことです。
蛤蚧(ごうかい)は「肺」と「腎」を補うことで、マクロファージ活性化させ、IgA産生を促進します。この生薬は、現在販売されている医薬品としては、この商品にしか含まれていません。
冬虫夏草(とうちゅうかそう)についても、「肺」と「腎」を補う生薬です。現代薬理作用の研究では、マクロファージの貪食機能を向上させ、Th1/Th2バランスを調整することでがんの発生を抑えることが分かっています。冬虫夏草は、とても高価な生薬であることが知られていますが、天然のものが含まれていることはほとんどありません。さらに医薬品として認められているのは、この漢方薬のみです。
「脾」(胃腸)を補いながら、「肺」と「腎」をしっかり強化することができるのは、この漢方の他にありません。
(3)お勧めの服用量
当店でお勧めしている漢方薬を服用する場合の目安として、抗癌剤の点滴を受ける場合は、前日から点滴後3日間までは最大量で服用し、治療が終わってからは量を減らして継続いただいています。予算や症状によって他の漢方薬と切り替えることもあります。
5.症例
60代男性。肺癌ステージ3。肺に水が溜まっていて動くと呼吸困難になり、食欲がなくなって以前より痩せていました。6日間は満量で続けてもらったところ、呼吸困難が減ると同時に、体のだるさも改善したという報告をいただきました。その後は半量に減らして継続していただきましたが、肺に溜まった水が減少していることが分かり、食欲も出てきたそうです。最終的に1/4の量でずっと継続していただくことで、今でも元気に過ごしていらっしゃいます。
6.まとめ
がんに使う漢方薬はたくさんの種類があります。今回は病院での治療と併用しやすいものについてお伝えしました。どんな治療を受けているか、どんな副反応が出ているか、血液検査はどのような状態なのかなどによっても使う漢方薬は変わってきます。ご相談いただく場合は、どのような治療を受けているか分かる資料をご持参いただくと、詳しくご提案することができます。
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