日中は暑さも厳しい季節となりましたが皆様如何お過ごしでしょうか。
今回は初夏の訪れを感じる果物、枇杷についてのお話です。
産毛のついている左右対称な丸みを帯びた果実が美味しいとされている枇杷はβ-カロテンも豊富で脂質の酸化を防止するクロロゲン酸も含んでいます。薬膳の世界では涼性の甘酸に分類され、肺熱による咳や痰、胃もたれ、吐気に効果をもたらすとされ暑くなってきた時期にぴったりな果物ですね。
葉には抗炎症・抗菌作用があり健胃や暑気あたりなどに用いられるだけでなく、アセモや湿疹には煎じ汁を塗布したり入浴剤として用いたり、打ち身や捻挫には焼酎漬けにした液を外用することで炎症を抑えることに用いられてきました。
枇杷は「大薬王樹」と言われ、種をまけば簡単に発芽し10年弱で人の背丈を越え、1年中大きな葉を茂らせることから古くから薬として多用されてきました。江戸時代には、枇杷の葉に藿香(かっこう)、木香、呉茱萸(ごしゅゆ)、肉桂、甘草、莪朮(がじゅつ)などの生薬を配合した「琵琶葉湯」が暑気払いに用いられたと言われています。この琵琶葉湯は京都烏丸を発祥として全国に広まり、江戸の地では庶民の夏の飲み物として重宝されたようです。
これから段々と暑くなる季節は暑気払いに枇杷のお茶や果実を食べながらまったり涼む時間を過ごしてみるのはいかがでしょうか。