「腎臓のために漢方薬を飲んでいます」という方は少なくありません。
漢方では、体質や症状に合わせて「腎」を補ったり、血流や水分代謝を整えたりする考え方があります。なお、漢方でいう「腎」は、西洋医学の腎臓そのものとは少し異なる概念です。一方で、腎臓病、とくに慢性腎臓病(CKD)では、医療機関で適切な治療や管理を受けながら、毎日の食事を見直すことも非常に重要です。
慢性腎臓病では、腎機能が低下するにつれて食事療法の重要性が高くなりますが、早い段階から食生活を整えることは、腎臓を長く守るためにも役立ちます。
ただし、「腎臓病=何でも制限しなければいけない」というわけではありません。大切なのは、必要な栄養をしっかり確保しながら、腎臓に負担となりやすいものを摂りすぎないことです。
今回は、腎臓病の食事で特に意識したいポイントを紹介します。
目次
腎臓病の食事で大切な3つのポイント
腎臓病の食事療法で基本となるのが、以下の3つです。
- 食塩を摂りすぎない
- タンパク質を適正量にする
- 必要なエネルギーをしっかり摂る
病状によっては、さらにカリウム、リン、水分などについて調整が必要になることもあります。
重要なのは、「制限すること」だけを考えないことです。食事を厳しく制限しすぎると、エネルギーやタンパク質が不足して、筋肉量が減少したり、体力が落ちたりすることがあります。
腎臓を守るための食事であっても、身体全体の栄養状態を良好に保つことが大切なのです。
まず取り組みたい「減塩」
腎臓病の食事で、まず意識したいのが食塩です。腎臓は体内の水分やナトリウムの調節に関わっているため、塩分の摂りすぎは血圧の上昇にもつながります。
血圧が高い方や、腎臓の血管への負担が気になる方にとって、減塩は重要なポイントになります。腎機能の低下が進むにつれて、タンパク質やカリウム、リンなどについて、より細かな調整が必要になることがあります。
日本人の食塩摂取量は、厚生労働省の令和6年国民健康・栄養調査によると1日平均9.6gです。一方、慢性腎臓病では、食塩摂取量を1日6g未満にすることが推奨されています。
ところが、ラーメンのように多くの方が塩分が高いと思っている食品を控え、塩分を減らしているつもりでも、知らない間に塩分が多く含まれている食品を摂っていることがあります。例えば、以下のような習慣には、塩分が隠れていることがあります。
- 味噌汁やスープを毎日何杯も飲む
- 漬物や佃煮をよく食べる
- ハム、ソーセージ、かまぼこなどの加工食品が多い
- 干物や塩鮭をよく食べる
- 醤油や塩を何にでもかける
- 外食や市販のお弁当を利用することが多い
- スナック菓子やせんべいをよく食べる
例えば、醤油ラーメンは汁まで飲むと1日の目標量に近い塩分量になる場合があります。「ラーメンの汁を残す」という一つの工夫だけでも意味がありますが、それだけではなく、1日の食事全体を見渡すことが大切です。
「薄味にする」だけが減塩ではありません
減塩というと、「全部の料理を薄味にしなければいけない」と考えてしまう方もいます。しかし、最初から完璧を目指す必要はありません。例えば、以下のようなことから始めてみましょう。
- 醤油は「かける」より「つける」
- 一度に使う調味料を計量する
- 出汁、酢、香辛料、薬味、ハーブなどを利用する
- 汁物の回数を減らす
- 麺類の汁を残す
- 加工食品を続けて食べない
特に注意したいのが、調味料だけではありません。出汁の素、コンソメ、旨味調味料などにも塩分が含まれている場合があります。「塩を使っていないから大丈夫」と思っている食品にも、意外なところから塩分が入っていることがあります。
そのため、食品の栄養成分表示を確認したり、食品成分表などを利用して、自分がどのくらい食塩を摂っているのかを知ることが減塩の第一歩になります。
タンパク質は「ただ減らせばいい」わけではない
腎臓病では「タンパク質を控えましょう」と言われることがあります。しかし、本来は「タンパク質を適正量にする」と考えることが大切です。
タンパク質を多く摂ると、代謝によって生じる老廃物の処理などで腎臓への負担が増えることがあります。腎機能の状態によっては、タンパク質の過剰摂取を避けたり、摂取量を調整したりする必要があります。ただし、すべての腎臓病の方が一律にタンパク質を減らせばよいわけではありません。
タンパク質を減らす場合には、エネルギー不足にも注意が必要で、エネルギーが不足すると、身体はエネルギーを補うために筋肉を分解してしまうことがあります。
そのため、「タンパク質を減らす」ことだけを考えるのではなく、必要なエネルギーを確保しながら、タンパク質を適正量に調整することが重要です。具体的な量は腎機能や年齢、体格、栄養状態などによって変わるため、自己判断で極端な制限をするのは避けましょう。
カリウムは「腎臓病なら制限」ではない
野菜や果物にはカリウムが多く含まれるため、「腎臓病だから野菜や果物を食べない」という考え方をする方もいます。しかし、カリウムは身体にとって重要なミネラルです。
腎機能が低下していても、血液中のカリウム値や病状によっては、必ずしもカリウム制限が必要とは限りません。高カリウム血症の危険性がある場合などに、医師や管理栄養士の指示に従って調整することが大切です。
むしろ注意したいのは、青汁やサプリメント、野菜ジュース、ドライフルーツなどを利用することで、知らないうちにカリウムを多く摂ってしまうケースです。「野菜は身体に良い」「健康食品だから安心」と一律に考えるのではなく、血液検査の結果を確認しながら考えることが大切です。
リンは「食品添加物」にも注意
腎臓病ではリンの管理が必要になることもあります。リンは身体に必要な栄養素ですが、腎機能が低下すると排泄しにくくなるため、摂りすぎには注意が必要です。
特に注意したいのが、リン酸塩などの食品添加物です。こうした添加物に含まれる無機リンは、肉や魚、豆類などの食品にもともと含まれるリンに比べて、体内に吸収されやすいとされています。加工食品を選ぶ際には、原材料表示を確認してみるのも一つの方法です。
ただし、腎臓病の食事では、最初から塩分、タンパク質、カリウム、リン……とすべてを細かく制限しようとすると、食事そのものが大きな負担になってしまいます。
まずは減塩とタンパク質の適正化、そして十分なエネルギーの確保を基本にして、リン酸塩などの食品添加物を多く含む加工食品に偏りすぎないことを目安にしていただくことが重要です。
腎臓を守るために「食事全体」を考える
腎臓病では、腎臓だけを見て食事を考えるのではなく、血圧や血糖、脂質なども含めて生活習慣全体を整えることが重要です。糖尿病に伴って腎機能が低下している場合は、血糖の管理も重要になります。
主食だけを大量に食べる丼物などに偏るよりも、主食・主菜・副菜を組み合わせ、野菜や食物繊維を取り入れた食事を心がけることが基本になります。
揚げ物や加工食品ばかりに偏らず、煮る、蒸す、茹でるなどさまざまな調理法を取り入れることで、食事全体のバランスを整えることも大切です。
漢方薬+食事で考える
漢方では、腎臓病のある方についても、体質や体調、さまざまな症状をみながら漢方薬を検討することがあります。しかし、腎臓病は慢性的に経過することが多く、食事療法も長期的に取り組んでいく必要があります。
だからこそ、「何か特別なものを食べれば腎臓が良くなる」という発想よりも、毎日の食事を少しずつ整えていくことが大切です。減塩も、タンパク質も、エネルギーも、最初から完璧にする必要はありません。
まずは自分が普段何を食べているのかを知る。そして「ここを少し減らせそう」「これは食べる頻度を下げよう」と、一つずつ改善していく。
腎臓病の食事療法は、我慢を積み重ねることではなく、腎臓を守りながら、長く続けられる食生活を作ることが大切なのです。
腎機能の状態によって必要な食事内容は異なります。特にタンパク質、カリウム、リン、水分などの制限が必要かどうかは、血液検査や尿検査などをもとに判断する必要があります。
漢方薬を取り入れる場合も、腎機能や治療内容を確認しながら、店頭で普段の食生活についてもお伺いし、無理なく続けられる食事の工夫を一緒に考えながらご提案しています。
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