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坐骨神経痛について

2025.11.03

冬に多い印象のある坐骨神経痛ですが、猛暑で家にいる時間が多くなることで、エアコンで体を冷や過ぎたり、運動不足が原因で坐骨神経痛(ざこつしんけいつう)になることがあります。

坐骨神経痛は、腰から足にかけての痛みやしびれを指す言葉で、「坐骨神経痛」という病名があるわけではなく、実際には複数の症状や症候のまとまりを指す「症候名」であり、原因となる病気や状態はさまざまです。

ここでは、坐骨神経痛の原因・症状・治療法について詳しく解説していきます。

 

坐骨神経痛とは?

坐骨神経は腰からお尻、太もも、ふくらはぎ、足先へと伸びる人体で最も長い神経です。この神経が 圧迫や刺激を受けることで、痛みやしびれが生じる状態 を「坐骨神経痛」と呼びます。

原因となる代表的な病気は以下の通りです。

  • 腰椎椎間板ヘルニア
  • 脊柱管狭窄症
  • 梨状筋症候群
  • 腰椎すべり症
  • 加齢による変性

このように、坐骨神経痛は 一つの病気ではなく、症状の総称 だという点がポイントです。

症状は人によって異なり、腰、お尻、太もも、ふくらはぎなどに痛みやしびれがでます。

 

坐骨神経痛の原因

・腰椎椎間板ヘルニア

椎間板が飛び出して神経を圧迫する状態です。強い腰痛や姿勢が伸ばせない症状を伴うこともあります。

 

・脊柱管狭窄症

背骨の中のトンネル(脊柱管)が狭くなり、神経を圧迫します。高齢者に多く、歩いていると痛みが出て休むと治まる「間欠性跛行」が典型的です。

 

・梨状筋症候群

お尻の奥にある梨状筋が坐骨神経を圧迫して起こります。現代人では特に増えており、長時間の座位や運動不足が関係します。しゃがむ動作が減った生活習慣の変化も要因とされます。お尻の奥に痛み、座位や内股姿勢で悪化しやすいことが特徴です。

 
 

・腰椎すべり症

腰椎が前後にずれて神経を圧迫します。座りっぱなしなど姿勢の悪さや寝転がっている時間が長い人に多く見られ、スマホや長時間のテレビ視聴も関係します。

 

・加齢による変性

年齢とともに椎間板や関節が変形し、神経を圧迫することがあります。体の歪みや片噛みの癖なども影響し、肩こりや首のこりと連動するケースもあります。

 

・生活習慣

運動不足や長時間の同じ姿勢は大きなリスクです。特に猛暑で外出を避け、冷房の効いた部屋で過ごす時間が長いと、筋力低下や血流不良が進みます。

 

坐骨神経痛の症状

坐骨神経痛による症状は以下の様な特徴があります。

  • 腰から足にかけての痛み・しびれ
  • 電気が走るような鋭い痛み
  • 灼熱感(触ると熱くないが、本人は熱いと感じる)
  • 足の冷感(血流障害による)
  • 間欠性跛行(歩くと痛み、休むと改善)
  • 重症例では排尿・排便障害

「灼熱感」を訴える場合も多いのですが、触っても熱くなく、実際に炎症や発熱があるわけではなく、神経が圧迫されることで誤作動を起こしているのが原因です。

 

西洋医学による治療法

・薬物療法

鎮痛剤や神経ブロック注射などで一時的に痛みを抑える方法です。

 

・理学療法

ストレッチや運動療法が基本です。

ラジオ体操第2やNHKで放送されているみんなの体操などがお勧めです。

無理のない範囲で毎日続けることで筋肉の柔軟性が保たれ、症状改善が期待できます。

 

・装具療法

コルセットや腰用サポーターを使用する方法です。市販品では「バンテリンの腰サポーター」などが使いやすいと評判です。

 

・ 外科的治療

保存療法で改善しない場合には手術も選択肢となります。レーザー治療や金属ボルトなどを用いた固定術などが行われます。

 

生活習慣でできる予防・改善

  • 姿勢を正しく保つ(椅子に深く座り、背筋を伸ばす)
  • 冷えから腰を守る(特に夏場の冷房や服装に注意)
  • 適度な運動を習慣化する
  • 長時間同じ姿勢を避け、こまめに体を動かす

特に女性では、腰回りを冷やす服装やお腹を出したファッションが仙腸関節障害を招きやすいので注意が必要です。

 

中医学的に考える坐骨神経痛

漢方では坐骨神経痛という病名で捉えることはありません。「腰痛」や「痺症(ひしょう)」といった症状名で捉えます。どのような痛みであれ、中医学的に考える痛みや痺れの原因は大きく分けて以下の二つです。

  • 不栄(ふえい):血流や栄養不足で筋肉・関節が弱る状態
  • 不通(ふつう):血行や気の流れが滞って痛みが出る状態

また、寒さ・湿気・風といった外部環境も影響すると考えられます。

症状が移動するなら「風邪」、重だるさは「湿邪」、冷えで悪化するなら「寒邪」といった捉え方をします。

治療では血流を良くする処方や、冷えを改善する処方を用いることが多いですが、運動や生活習慣の改善と組み合わせることも大切です。

坐骨神経痛によく用いられる漢方薬は以下のようなものがあります。

疎経活血湯

『万病回春』という書物に書かれた処方です。 血流の改善を中心に水毒、着痺、行痺の3つの原因を改善し、炎症を抑える働きを持った複雑な働きのある漢方薬です。

 

独活寄生湯

『備急千金要方』という書物に書かれた処方です。 気血が不足したり、老化で体が弱っている場合に、冷えや湿気と言った邪気が侵入してくることで発症した痛みに用います。 身体を温めた際に痛みが緩和するかは、この漢方薬を使う大事なポイントです。

 

五積散

『和剤局方』という書物に書かれた処方です。 身体の冷えが強い時によく用いる漢方薬で、特に身体の中と外の両方から体を冷やした時に適しています。気温が下がる冬だけでなく、エアコンや冷たい飲食物で体を冷やした夏に用いることもあります。 身体を温めながら、胃腸を動かし、余分な水を捌き、気血を動かすことで痛みを改善します。

 

芍薬甘草湯

『傷寒論』という書物に書かれた処方です。 足のこむら返りによく用いられる漢方薬ですが、梨状筋などの筋肉が引き攣って痛むような時に他の処方と合わせて用いることがあります。 甘草という生薬の量が多く、常用すると低カリウム血症になる可能性があるので、専門家にご相談のうえで使用することをお勧めします。

 

まとめ

  • 坐骨神経痛は特定の病気ではなく、腰や神経に関わるさまざまな要因から生じる症状の総称です。
  • 主な原因は「椎間板ヘルニア」「脊柱管狭窄症」「梨状筋症候群」など
  • 症状は痛み・しびれ・冷感・灼熱感など多岐にわたる
  • 予防には正しい姿勢・運動・冷え対策が重要

また、漢方では血流や気の滞り、冷えや湿気といった要因が関与すると考えられています。原因によっては、いくつかの漢方を組み合わたり、ここで紹介した以外の漢方を用いることがあります。

無理のない運動習慣や姿勢改善を取り入れながら、漢方薬で原因を取り除いていくことは、坐骨神経痛の改善に有効です。

自己判断で八味地黄丸などの漢方薬を飲んでいるけど、あまり症状に変化がないと相談を受けることもありますですが、お困りの際は漢方の専門家にご相談ください。

 
 

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