
春のめまいと中医学的アプローチ
春になると、「なんとなく頭がふらふらする」「「足元がふわふわする」「といった“めまい”のご相談が増えてきます。現代医学では、めまいの原因として耳の中の三半規管の異常や血圧の変動、自律神経の乱れなどが挙げられますが、中医学ではもう少し広い視点で体全体のバランスの乱れからその原因を探ります。
春と「肝」の関係
中医学では、春は「肝」の季節とされます。「肝」は単なる臓器ではなく、気や血(エネルギーや栄養)を体内に巡らせ、感情の調整や目、筋肉などの働きとも関係している重要なシステムとされています。春は自然界の陽気が上昇し、それに伴い人間の体内でも肝の気が活発になります。これは本来は自然な流れなのですが、もともと「肝」が弱っていたり、ストレスや怒りなどの強い感情によって「肝気」がスムーズに流れなくなったりすると、体の上部に余分な気がたまりやすくなり、めまいや頭重感として現れてくるのです。
「肝風」や「肝陽」の影響
また、「肝」は「風(ふう)」を生じやすいとも言われます。この「風」とは、体の内側で起こる揺らぎや不安定さを指します。たとえば、「肝陽上亢(かんようじょうこう)」という状態では、肝の気が上昇しすぎて頭に血がのぼり、めまい・頭痛・耳鳴り・目の充血・怒りっぽさなどが現れます。「肝風内動(かんぷうないどう)」では、気や血が不足した状態で肝の内側に“風”が生じ、ふらふらとしためまいや手足のふるえ、しびれ、失神傾向などが起こることもあります。
女性と春のめまい
特に女性は生理やホルモンバランスの影響で気血が不足しやすいため、春先にめまいを感じやすい傾向があります。また、更年期の女性に多い「肝腎陰虚(かんじんいんきょ)」タイプのめまいも、中医学ではよく見られる症例です。このタイプでは、夜になると症状が強くなったり、のぼせや動悸、不眠を伴うことがあります。
春のめまいへの対処法
では、春のめまいをどう対処すればよいのでしょうか?
まず大切なのは、生活リズムを整えることです。夜更かしや過労を避け、十分な睡眠をとることで「肝血(かんけつ)」をしっかり養うことができます。ストレスの多い方は、深呼吸やストレッチ、軽い散歩などで「気」の巡りを良くし、「肝気鬱結(かんきうっけつ)」を防ぐことが大切です。
春におすすめの食養生
食養生では、春の肝の働きを助ける青菜類(春菊、ほうれん草、小松菜など)や、酸味のある食材(梅干し、酢、柑橘類)を適度に取り入れるとよいでしょう。ただし、酸味の摂りすぎは逆に「肝気の滞り」を助長する場合もあるので、バランスが大切です。
漢方薬でのケア
また、漢方薬ではめまいには「釣藤鈎(ちょうとうこう)」「天麻(てんま)」などを含む処方がよく使われますが、体質や症状によって使う漢方は大きく異なります。特に春のめまいには、釣藤散や抑肝散など釣藤鈎が入った漢方によって、肝の昂りによるめまいを改善しますが、個別の体質に合わせた調整が必要です。
まとめ:春の体調変化に注意
春は新しいスタートの季節でもありますが、環境の変化や気温差によって心身が不安定になりやすい時期でもあります。めまいのような体のサインを見逃さず、早めの対策を心がけましょう。お一人おひとりの体質や状態に合ったご提案をいたしますので、気になる症状がある方は、ぜひお気軽にご相談ください。