
漢方薬店には、健康診断の結果が悪く、漢方で改善したいというお客様が多くいらっしゃいます。
中には自覚症状がないまま異常値を指摘され、不安になる方も多いようです。
今回は、相談で相談の多い検査項目について、またその数値の異常を中医学ではどう捉えるのか解説していきます。
動脈硬化
コレステロール
コレステロールは脂質の一種で、全身の細胞膜の成分になり、ホルモンやビタミンDの原料となります。
胆汁酸の原料となり、食事の脂質やビタミンの吸収を手助けします。
コレステロールの運搬と回収は、LDLコレステロールとHDLコレステロールがそれぞれ異なる役割を担っています。
LDLコレステロールは肝臓で作られたコレステロールを全身の細胞に運び、HDLコレステロールは余ったコレステロールを回収して肝臓に戻す役割をします。
HDLコレステロールは善玉コレステロールと呼ばれ、低値になると動脈硬化になりやすく、LDLコレステロールは悪玉コレステロールと呼ばれ、高値では動脈硬化になりやすくなります。
基準値は、総コレステロール(T-CHO)が142~248mg/dL、HDLコレステロール(HKL-C)は40mg/dL以上、LDLコレステロール(LDL‐C)は139mg/dL未満となります。
中性脂肪
中性脂肪(トリグリセリド、TG)は、体内でエネルギー源として使われる脂肪のことです。
食事から摂取された脂肪や肝臓で合成されたものが中性脂肪となり、エネルギー源として利用されます。
余った分は皮下脂肪や内臓脂肪として蓄えられます。
中性脂肪が高いと動脈硬化を進行させ、心筋梗塞や脳梗塞などのリスクを高めます。
基準値は、149mg/dL以下です。
中医学では、コレステロールや中性脂肪が高い脂質異常症について、痰湿、肝鬱、腎虚、瘀血などのタイプに分類して対応します。
よく用いられるのは温胆湯、半夏瀉心湯、逍遥散、杞菊地黄丸、桃核承気湯、田七人参などです。
便秘気味であれば便通を改善することも重要です。
肝機能
AST・ALT
ASTはアスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ、ALTはアラニンアミノトランスフェラーゼという酵素のことで、数値が高いほど肝臓にダメージが溜まっていることを示します。
これらは肝細胞に存在する酵素で、肝臓の細胞が壊れることで酵素が血液中に漏れ出します。
そのため、数値が高くなるほど肝臓の細胞が壊れていると捉え、脂肪肝や肝炎の指標となります。
漢方では、血流を改善し「肝」の働きを助ける物や修復作用を持つ生薬が入った処方を使用します。
基準値については、ASTが13~30U/L、ALTが男性で10~42U/L、女性で7~23U/Lです。
ガンマGTP
ガンマGTP(γ-GTP)は肝臓などに存在する酵素で、タンパク質を分解し、アミノ酸をつくり出す働きがあります。
また、肝臓の重要な働きの1つである解毒作用にも深く関わっています。
肝臓や胆管が障害を受けて細胞が破壊されると、血液に漏れ出して数値が上がります。
各種薬剤やサプリメント服用によっても上昇することがありますが、多くの場合は飲酒や脂肪肝が原因です。
漢方では、血流を改善し「肝」の働きを助ける物や肝臓の代謝を助ける生薬を使用します。
基準値は男性で13~64U/L、女性で9~32U/Lです。
アルブミン
アルブミン(ALB)は肝臓で作られるたんぱく質で、栄養状態や肝臓・腎臓の健康状態を知る手がかりとなります。
高齢者やガン患者の場合は、特に注意してみないといけない数字で、3.5g/dL以下は悪液質といって筋肉の減少を伴う全身衰弱の状態になります。
アルブミンの低下には、栄養学的にBCAA(分枝鎖アミノ酸)を使うことが推奨されていますが、胃腸の力が落ちて栄養を吸収することができないとアルブミンを合成することができません。
漢方では「脾」や「腎」の機能が低下し、正気が極端に減少した状態と捉え、栄養だけでなく吸収する力をつけてくれるものを用います。
アルブミンは血液中のトラックの様な役割を持っています。
数値が低いと物を運ぶ能力がないので、体の栄養素や薬を運ぶことができず、代謝ゴミを回収することもできません。
病気を治すためにも必要です。
アルブミンが低く栄養を運ぶ力がないと、冷え性で爪が割れやすく、髪がパサパサで皮膚に潤いがなく、足にしもやけができやすい等の症状が出やすくなります。
こうした方は漢方薬でも温めることが難しいのですが、アルブミンを高めることで手足が温まり、爪が綺麗になることがあります。
基準値は4.1~5.1g/dLです。
腎機能
クレアチニン
筋肉がエネルギーを生成する際にできる老廃物で、腎臓でろ過され尿として排出されます。
腎機能が低下すると、クレアチニンが血液中に蓄積することで、数値が高くなります。
標準値は、男性で0.65~1.07mg/dL、女性で0.46~0.79mg/dLです。
eGFR
eGFR(推算糸球体濾過量)は腎臓のろ過機能を表し、低下すると腎機能の低下が疑われます。
クレアチニン値や年齢、性別を元に計算されます。
最近はクレアチニンよりもeGFRを重視することが増えました。
中医学の「腎」は西洋医学の腎臓よりも広い意味を含みますが、「腎」は水を主る臓腑だとされます。
他にも水分代謝が関わる「脾」や「肺」も腎機能を上げるためには大事な要素です。
「腎」や「脾」を補う漢方を中心に血流を良くする漢方をよく用います。
eGFRの標準値は60mL/分/1.73m²以上です。
60mL/分/1.73㎡未満の状態が3ヶ月以上続くと、慢性腎臓病(CKD)と診断されることがあります。
さらに15mL/分/1.73m²未満になると透析の必要性が検討されます。
eGFRが低下すると、たんぱく質と塩分の摂取量にも注意する必要があります。
糖尿症例
グルコース
グルコース(GLU)は、血液中のグルコース(ブドウ糖)の濃度を示す指標です。
健康診断では、空腹時血糖値が測定され、糖尿病の診断基準の一つとなります。
食後に眠くて仕方ないという方は、食後高血糖が原因であることも多いとされています。
食生活の不摂生が原因となることはもちろんですが、中医学的には、脾虚湿滞、湿盛中阻、脾虚肝鬱などのタイプであることが多いです。
空腹時血糖値の標準値は73~109mg/dLです。
ヘモグロビンA1c
HbA1c(ヘモグロビンA1c)は、血液中のヘモグロビンにブドウ糖が結合したグリコヘモグロビンの割合を示す数値で、過去1〜2ヶ月の平均血糖を表します。
この数値が高くなると糖尿病の合併症である皮膚の痒みや手足の冷え、心臓や目の症状が出やすくなります。
中医学では、グリコヘモグロビンが高いのは血流が悪い「瘀血」に分類されます。
そのため、HbA1cを下げるには食事制限しながら、同時に強い活血薬を用いることが有効です。
標準値は4.9~6.0%で、6.5%以上は糖尿病の可能性が高いと診断されます。
症例
50代女性。158㎝、63㎏。
HbA1cが6.2で下半身に痒みがある。
入眠に1時間かかり、途中で何回も目が覚める。
頚椎症で首の痛みあり。
破血薬という種類の漢方薬と痰湿を取る漢方を併用していただき、1ヶ月後にはHbA1cが5.7に減少。
睡眠の質も改善し皮膚の痒みも消失。
現在は、頚椎症の治療を続けていただいてます。
まとめ
現代医療において、検査数値は病気の早期発見や予防に大いに役立っています。
しかしながら「異常なし」でも不調がある、もしくは「数値は悪いけど元気」というケースも少なくありません。
中医学では、数値だけでは測ることができない感覚に目を向けることで、身体全体のバランスを整えることを重視します。
数値と感覚の両方に耳を傾けることが、よりよい健康管理に繋がります。
検査項目は、病院によって表記の仕方が異なることもあるので、数値の見方が分からない時は検査表を持ってお越しくださいませ。
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◎参考文献
コレステロール摂取に関するQ&A【日本動脈硬化学会】
https://www.j-athero.org/jp/general/5_colqa/
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