皆さんは血液検査の結果を見たとき、どのような感想を抱きますか?「基準値内だから大丈夫」と安心する方もいれば、「この数字は何を意味するのだろう?」と疑問に感じる方もいるかもしれません。実は、血液検査の数値は、私たちの体が日々どんな状態にあるのか、そして何かしらの異常を訴えている、いわば「体からのお便り」のようなものです。
臓器は文句一つ言わずに私たちの命を繋ぐために働き続けています。臓器が「もっと頑張って」とか「休んで」といった言葉を直接発することはありません。しかし、血液検査の数値は、その臓器たちが私たちの生活習慣や食事によってどのような影響を受けているのかを映し出しています。
今回は、日々の健康管理に役立てるためのポイントを、その「お便り」を読み解いてご説明していきます。
1.赤血球(RBC)
赤血球の最も重要な役割は、酸素を全身に運ぶことで、基準値は男性で400~550万個/μL、女性で350~500万個/μLです。酸素は、私たちが生きていく上で不可欠な「ATP(アデノシン三リン酸)」というエネルギーを作り出すために必要不可欠です。酸素が足りていなければ臓器は機能せず、「溺れている」状態と同じです。正常値であっても不調を感じる方は多く、理想としては450万個/μLくらいを目指すようにお伝えしています。
ちなみに中医学でいう「気」はこのATPというエネルギーのことを含んでいると考えられます。「血は気の母」という中医学の考えがありますが、ATPを作るための酸素を赤血球が運んでいることとぴったりと一致しています。赤血球を増やすには鉄分を含んだ食事やサプリに加えて、造血作用のある漢方薬を併用します。
2.ヘモグロビン(Hb)
ヘモグロビン(血色素量)は、赤血球に含まれる赤い色素たんぱく質のことで、役割を例えると酸素を運ぶ「トラックの台数」です。基準値は、男性で13.5~17.5g/dL、女性で11.5~15.0g/dLですが、個人的にはヘモグロビン値は13.5g/dL以上あることが望ましいと考えています。特に、生理のある女性は毎月鉄分が失われるため、この値に達するのは難しいですが、元気で過ごすためには非常に重要です。閉経後の女性や男性は、13.5g/dL以上を維持すべきです。
また、13.5g/dLであっても、同時に次のヘマトクリットが40%程度であることが非常に重要です。
3.ヘマトクリット(Ht)
血液の「濃さ」を示す指標で、血液検査のデータを見る上で最初にチェックすべき重要な項目です。一般的な基準値は男性で40~50%、女性で35~45%ですが、基準値内であっても例えば女性で40%なのか45%なのかでは他の数値の意味合いが変わってきます。
ヘマトクリットは血液中の赤血球の割合のことです。ヘマトクリットが高い場合、血液が濃縮されている状態で例えるなら「煮詰まった味噌汁」のようなイメージです。この場合、赤血球数やヘモグロビン値が検査する上で実際よりも高く見えてしまうため、貧血が見逃されることがあります。「煮詰まった味噌汁」をお椀によそう場合、一見すると具材が多く見えますが鍋全体の具が多いわけではありません。
ヘマトクリットが高いのは、体内の水分が不足しているだけでなく、アルブミン(タンパク質から作られる)の不足が原因である場合が多いです。アルブミンは血管内の水分量を調整する役割を担っているため、アルブミンが少ないと水分が血管外に漏れ出し、血液が濃縮されてしまいます。これは、タンパク質不足のサインとして捉えることができます。逆にヘマトクリットが低い場合、血液が薄すぎる状態で、「具がなさすぎで薄い味噌汁」のような状態です。
4.MCV
MCV(平均赤血球容積)は、赤血球の大きさを表す指標で、一般的な基準値は85~102fL程度です。
MCVが小さい(85fL以下)場合、鉄分とタンパク質の不足が考えられます。赤血球が小さいと、運べる酸素の量が減り、体はエネルギー不足に陥りやすくなります。不登校の子供にMCVの低下が多く見られます。
MCVが高い(100fL以上)場合、これは胃の機能低下とビタミンB12の吸収不全を示唆します。ビタミンB12は、成熟した赤血球を作るために必須ですが、胃から分泌される「内因子」と結合しないと吸収されません。胃の調子が悪いと内因子が十分に分泌されないため、赤血球が未熟なまま大きくなってしまいます(大球性貧血)。
赤血球が大きいというのは悪いことではないようですが、酸素を効率的に運ぶためには赤血球の中央がくぼんでいることで、表面積を増やさなければなりませんが、大き過ぎる赤血球にはそのくぼみがありません。毛細血管は赤血球の直径よりも小さいため、赤血球の形状を変化させる「変形能」が重要です。大きすぎる赤血球は、くぼみがなく「変形能」が低いため、細い血管に入りにくく、酸素運搬効率が低下してしまいます。
5.MCH、MCHC
MCH(平均赤血球ヘモグロビン量)は、赤血球1個あたりに含まれるヘモグロビンの量を表します。基準値は一般的に27~32pgです。MCHC(平均赤血球ヘモグロビン濃度)は、赤血球1個に含まれるヘモグロビンの濃さを表します。基準値は、一般的に31~36%です。
ヘモグロビンのことを「どれだけトラックの台数を持っているか」と例えるなら、MCHは「トラックの荷台の収容量」を表しています。荷台の高さがきちんとあるトラックなら、多くの荷物を積めます。しかし荷台が浅いとあまり荷物を積めません。MCHCは、トラックのように荷台の収容できる量に対し、「実際に積んでいる割合」を示しています。
6.白血球(WBC)
白血球は体に入った細菌やウイルスなどと戦う免疫細胞で、基準値は3,100~8,400/μLです。感染症にかかると増えるのが当然なので、一時的な増減はあまり気にしないことが多いです。特に高い場合は、自覚していなくてもカゼをひきかけて白血球が増え始めていたというようなことがあります。しかし、極端に低い場合は、栄養状態が悪く、免疫力が低下している可能性があります。抗がん剤治療中においては、薬の影響で数値が低くなるので注意が必要で、その場合は腎精を補う漢方薬などを用いて対応します。
7.血小板(PLT)
出血を止める役割がある血小板の正常値は15万~35万/μLとされていますが、血小板数が高い場合は体内に微細な炎症が起こっている可能性があります。炎症を示す数値としてCRPが代表的なマーカーですが、CRPが上がらないような軽度な炎症(肥満による脂肪肝など)でも血小板は上昇することがあるため、他の検査項目と併せて確認するなどして注意が必要です。
8.まとめ
血液検査の数値は、単なる数字の羅列ではありません。それは、私たちの体が発する「声」であり、私たち自身の健康への向き合い方や日々の生活習慣が反映された「お便り」です。
「低い数字が良いとは限らない」「高い数字が悪いとは限らない」ということを理解し、それぞれの数字が何を意味しているのかを読み解くことが大切です。
食事内容や生活習慣を改善することで、血液検査の数値は変化します。体質的な問題があれば漢方薬を服用することで、数値が改善するとともに体調の良さを実感いただけることがあります。
ぜひ、この「体からのお便り」を上手に活用することで、ご自身の健康を深く理解し、自分の体を見直すきっかけにしていただけたらと思います。検査数値の見方で分からないことがあれば、検査数値の一覧を持ってご相談いただけたら幸いです。
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