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甲状腺機能低下症(橋本病)を漢方で考えると

「なんとなく疲れやすい」「冷えが強くなった」「最近太りやすい気がする」——そんな不調を感じていませんか?
実はその不調、甲状腺ホルモンのバランスが関係していることもあります。
体の代謝を支える小さな臓器「甲状腺」の働きと、体質から整える漢方(中医学)の考え方について、一緒に見ていきましょう。

甲状腺とはどんな臓器?

のどぼとけのすぐ下にある「甲状腺(こうじょうせん)」は、蝶が羽を広げたような形をしています。
この甲状腺は「甲状腺ホルモン」という大切なホルモンを作り、血液を通して全身に送り出しています。

甲状腺ホルモンは体の「代謝」をコントロールするスイッチのような存在で、心臓、肝臓、腎臓、脳など、あらゆる臓器の働きを助けています。
代謝がうまくいくことで、私たちは体温を保ち、心臓を動かし、考え、動くことができます。
そのため、甲状腺ホルモンが不足するとエネルギーの生産が滞り、体全体の活動がスローダウンしてしまいます。

 

甲状腺ホルモンが少ないとどうなる?

甲状腺ホルモンが不足する状態を「甲状腺機能低下症」といいます。
甲状腺ホルモンが少なくなると体のエネルギーが作りにくくなり、次のような症状が出やすくなります。

  • 疲れやすく元気が出ない
  • 体がむくみやすい
  • 寒がりになる
  • 体重が増える
  • 動作や話し方がゆっくりになる
  • 記憶力が落ちる
  • 便秘や乾燥肌

「年のせいかな」「更年期かも」と思って放置してしまう方も多いのですが、甲状腺の働きが関係していることも少なくありません。

 

検査と治療について

血液検査で「甲状腺ホルモン(FT4・FT3)」と「TSH(甲状腺刺激ホルモン)」を測ることで診断します。
TSHが高く、甲状腺ホルモンが低いときに「甲状腺機能低下症」と診断されます。

治療は、不足したホルモンを補う「チラーヂン®S」という薬を内服するのが基本です。
薬は少量から始めて調整しながら続け、安定するまで数か月かかることもあります。

 

主な原因は「橋本病」

甲状腺の働きが弱くなる原因の多くは、「橋本病(はしもとびょう)」と呼ばれる自己免疫の病気です。
本来は外から入ってくる細菌やウイルスを攻撃するはずの免疫が、何らかのきっかけで自分の甲状腺を攻撃してしまい、ホルモンが作られにくくなります。

橋本病になると甲状腺が腫れて首の前が張って見えることがあります。
また、髪が抜けやすい・皮膚が乾く・月経が多いなど、エネルギー不足に伴う症状も見られます。

 

女性と甲状腺の深い関係

甲状腺ホルモンは代謝だけでなく、「妊娠・出産」や「成長・発達」にも関係しています。
そのため、女性ホルモンの変化が大きい思春期・妊娠期・更年期には、甲状腺トラブルが起こりやすくなります。

不妊や流産、月経異常などの背景に甲状腺の不調が隠れていることもあり、妊娠を希望する方は一度チェックしてみると安心です。

 

漢方(中医学)から見た甲状腺機能低下症

漢方では、甲状腺機能低下症という病名としては存在しませんが、症状の特徴から「気血不足」「腎陽虚」「痰湿」などの体質の乱れとしてとらえます。

 気血不足タイプ(疲れ・だるさ)

もともと胃腸が弱く、疲れやすく、顔色が白いタイプです。
体を動かすエネルギー(気)と体を養う栄養(血)が不足し、代謝が落ちて冷えやすくなります。

  • 疲れやすい
  • 顔色が白い
  • 食欲がない
  • 動くと息切れ
  • 生理が遅れがち

漢方薬:補中益気湯、十全大補湯など
おすすめの食養生:鶏肉、黒豆、なつめ、山芋など。冷たい食べ物や無理なダイエットを避けましょう。

 腎陽虚タイプ(冷え・むくみ)

「腎陽」とは体を温める根本的なエネルギーのこと。
この力が弱まると体の熱が足りず、冷えが強くなり代謝が低下します。

  • 強い冷え(手足・腰)
  • むくみ
  • 体重増加
  • 疲れが抜けない
  • 尿が少ない

漢方薬:八味地黄丸、参茸補血丸、霊鹿参
おすすめの食養生:羊肉、海老、にら、しょうが、黒ごま、桂皮(シナモン)など。

 痰湿タイプ(むくみ・重だるさ)

水分代謝が悪く、体内に余分な「湿」がたまった状態です。
特に橋本病の方に多く見られ、体が重い・むくみやすいなどの症状が特徴です。

  • 体が重い
  • 顔のむくみ
  • 眠気が強い
  • 口の粘つき
  • 便がベタベタする

漢方薬:藿香正気散、温胆湯、胃苓湯など
おすすめの食養生:ハトムギ、冬瓜、大根、緑豆、昆布など。脂っこい食事や甘いものを控えましょう。

 

漢方的なケアの考え方

漢方では体質に合わせて「気血を補う」「腎を温める」「湿を取り除く」などの方法で全身のバランスを整えます。
続けることで体の芯から温まり、冷えや疲れが軽くなる方も多くいらっしゃいます。

また、ストレスや過労、睡眠不足はホルモンバランスを乱す大きな要因です。
「早寝・早起き・温かい食事・穏やかな心」——そんな日常の積み重ねが、甲状腺の働きを助ける最良の養生です。

 

改善例

42歳女性/152㎝・68㎏
天気が悪い時の体調不良、吐き気と頭痛。4年前に甲状腺機能低下症を治療したことがある。

〈初診〉秋雨が続く時期に痰湿による不調と判断し、湿をさばく漢方を処方。
〈二診〉1週間後、吐き気が消失するも強い疲労感が残る。腎陽虚を疑い、腎を補う漢方を追加。
〈三診〉2週間後、頭痛・重だるさ・天気による不調がほぼ消失。

 

よくある質問(FAQ)

・甲状腺機能低下症は漢方だけで治りますか?

基本は西洋医学によるホルモン補充が優先されますが、体質改善として漢方を併用するケースがあります。

 

まとめ

甲状腺機能低下症は、体の代謝を司るホルモンの不足によって起こります。
現代医学ではホルモンを補いながら整え、東洋医学では体質の根本からバランスを回復させていきます。

この二つの視点を組み合わせることで、より自然に、より根本から体を整えることができます。
なんとなく元気が出ない、冷えやむくみが続くという方は、一度「甲状腺」と「体質」の両方から見直してみましょう。
体のサインに耳を傾け、早めのケアが健康の第一歩です。

 

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