「舌がピリピリする」
「何も異常がないと言われたのに痛い」
「食事や会話がつらい」
このような症状に悩まされていませんか?
舌痛症(ぜっつうしょう)は、見た目には大きな異常がないにもかかわらず、舌に慢性的な痛みや違和感が続く病気です。歯科や口腔外科を受診しても「異常なし」と言われることも多く、不安を抱えたまま過ごしている方も少なくありません。
特に、ストレスや自律神経の乱れ、胃腸の不調、更年期などが関係するケースもあり、単純な「舌の病気」だけでは説明できないこともあります。
今回は舌痛症について、西洋医学と中医学の両面から原因や対処法を解説します。
舌痛症とは
舌痛症(Burning Mouth Syndrome:BMS)は、舌に明らかな炎症や傷がないにもかかわらず、ヒリヒリ・ピリピリ・焼けるような痛みを感じる状態です。特に閉経前後の女性に多く、有病率は一般人口の約0.7~15%と報告されています。
主に以下のような症状が見られます。
- 舌の先や縁、全体がヒリヒリ・ジリジリする
- 熱いものを食べたときのような灼熱感
- 味覚の異常(苦く感じる、金属的な味がする)
- 口の中が乾く(口腔乾燥感)
- 症状は日内変動があり、夕方から夜にかけて強くなる傾向
見た目に異常が少ないため、「気のせいでは?」と思われてしまうこともありますが、実際には強い苦痛を伴うことがあります。
また、舌だけでなく、唇、歯ぐき、上あご、喉などに違和感が広がる場合もあります。
舌痛症の原因
舌痛症は一つの原因だけで起こるわけではなく、複数の要因が重なっていることが多いと考えられています。
ストレス・自律神経の乱れ
緊張や不安が続くことで神経が過敏になり、わずかな刺激でも痛みとして感じやすくなります。最近では、舌痛症には「神経の過敏状態(神経障害性疼痛)」が関係しているとも考えられています。
特に、以下のような傾向のある方にみられることがあります。
- 責任感が強い
- 頑張り過ぎてしまう
- 我慢しやすい
- 気を遣いやすい
- 疲れていても無理をする
というタイプの方に多くみられます。
ドライマウス(口腔乾燥)
唾液には、舌の粘膜を保護し、刺激から守る働きがあります。ストレス、更年期、薬の副作用などで唾液が減ると、舌が刺激に弱くなり、痛みが出やすくなります。
更年期・ホルモン変化
舌痛症は、特に閉経前後の女性に多くみられ、更年期との関連も指摘されています。女性ホルモンの変化は、自律神経や唾液分泌、粘膜の状態、痛みの感じ方にも影響します。
栄養不足
鉄・亜鉛・ビタミンB群不足などで、舌の粘膜や神経機能が影響を受け、症状が出ることがあります。また、胃腸が弱い方では栄養をうまく吸収できていないケースもあります。
西洋医学による治療法
舌痛症では、まずは以下のような病気が隠れていないか確認することが重要です。
- 口内炎
- カンジダ
- 貧血
- シェーグレン症候群
- 糖尿病
- 神経の異常
- 金属アレルギー
これらの病気を除外したうえで、舌痛症と考えられる場合には、以下のような対応が用いられることがあります。
- 神経の過敏を和らげる薬(抗不安薬・抗うつ薬など)
- 口腔乾燥を和らげる保湿剤
- ストレスとの付き合い方を整える認知行動療法
ただし、薬だけで劇的に改善するとは限らず、以下のように生活習慣や全身状態を整えることが重要になるケースも少なくありません。
- ストレス対策
- 良質な睡眠
- 胃腸に負担をかけない食事
日常生活で気を付けたいこと
刺激物を控える
舌痛症では、舌の粘膜や神経が敏感になっていることが多く、以下のような刺激物によって症状が悪化することがあります。
- 香辛料
- 熱すぎる食べ物
- アルコール
- 強い酸味
口の乾燥対策
唾液には、舌の粘膜を保護する働きがあります。そのため、以下のような対策によって口の乾燥を防ぐことも大切です。
- こまめな水分補給
- 口呼吸の改善
- 唾液腺マッサージ
また、カフェインやアルコールの摂り過ぎによって乾燥が悪化する場合もあります。
休息をしっかり取る
最近では、舌痛症には「神経の過敏状態」が関係しているとも考えられています。そのため、無理を続けると症状が悪化しやすい傾向があります。
特に、「休むのが苦手」「頑張りすぎてしまう」という方ほど、意識的に力を抜くことが大切です。深呼吸や散歩、早めの就寝など、“休む時間”を意識して作ることも役立ちます。
中医学的な原因と対処法
中医学では、舌は「心の苗」と呼ばれるように、五臓の1つである「心」と関係が深く、他に「脾」・「肝」・「腎」との関係も考えます。また、「不通則痛(通じなければ痛む)」という考え方があり、気血の巡りが悪くなることで、舌の経絡が滞り痛みや痺れが発生していると捉えることもあります。
舌痛症は以下のような「証(しょう)」に分類され、それぞれ対処法が異なります。
心火亢盛(しんかこうせい)
ストレスや緊張、辛い物の取り過ぎによって「心」に熱がこもっている状態です。特徴としては、舌の先が赤く、痛みが強く、口が渇き、イライラしやすい、不眠、小便が黄色いなどの特徴が見られます。
夜更かしを避ける、辛い物を控える、リラックス時間を作ることが大切です。心の熱を冷まし、興奮状態を鎮める漢方薬を用いて治療します。
肝鬱気滞(かんうつきたい)
ストレスによって「肝」の働きが乱れ、気の流れが滞った状態です。気の巡りが悪くなることで、舌の絡脈も滞り、違和感や痛みが出やすくなります。
特徴としては、舌の横側が痛む、症状に波がある、緊張で悪化する、喉のつかえ感、ため息が多い、腹部や脇腹が張るなどが見られます。
対処法としては、軽い運動、深呼吸、散歩、香りの良いものを嗅ぐ、趣味の時間などによって気の巡りを整えることが重要です。疏肝理気の漢方薬を用いて治療します。
陰虚火旺(いんきょかおう)
体を潤す「腎陰」が不足することで熱感が出ている状態です。更年期以降の方に多くみられます。
夕方から夜にかけて痛みが増す、舌が赤く苔が少ない、口の乾燥、ほてり、寝汗、腰のだるさなどの特徴が見られます。
対処法としては、睡眠をしっかり取る、疲労を溜めない、潤いを補う食事などが大切です。滋陰降火の漢方薬を用いて治療します。
脾陰虚(ひいんきょ)
胃腸の働きが弱り、さらに“潤い”まで不足している状態です。中医学では「脾」は消化吸収を担うだけでなく、気血や津液(しんえき:体の潤い)を作る重要な臓腑と考えます。
そのため胃腸の弱りが長く続くと、舌や口の粘膜を潤す力も低下し、ヒリヒリ感、乾燥感、舌の違和感、味覚異常などが起こりやすくなります。
対策としては、甘い物・味が濃い物・辛い物の摂りすぎ、冷たい飲食、不規則な食事などを避けることが重要です。胃腸を整えながら潤いを補う漢方薬を用いて治療します。
絡脈阻滞(らくみゃくそたい)
中医学では、経絡が滞りによって痛みや痺れが発生する状態を「痺症(ひしょう)」と呼びます。気滞、瘀血、熱、痰、ストレスなどによって舌の経絡が滞り、「不通則痛」の状態になっていると考えられます。
ピリピリする、接触によりしみるなど、“神経が過敏になっている”ような症状がみられることがあります。気血の巡りを改善し、経絡の滞りを整える漢方薬を用いて治療します。
改善例
70代女性。
数か月前から舌の中央から先にかけて痺れを感じるようになったそうで、同じ時期から何を食べても塩辛く感じるなど、味覚異常も出現していました。歯科や耳鼻科を受診するも「異常なし」と言われ、漢方薬もいくつか試したが改善しなかったそうです。
もともと胃腸はあまり強くなく、やせ型で冷え性。また、お酒を毎日のように飲む習慣もありました。舌を拝見すると、むくみを示す胖大舌(はんだいぜつ)で、血流低下を示す瘀点(おてん)がありました。
亜鉛補給を行いながら、疏風止痛(そふうしつう)の働きを持つ漢方薬を2週間服用していただいたところ、舌の痺れが気になる時間が減っていき、「久しぶりに食事がおいしく感じられた」と話されていました。
※改善には個人差があります。
まとめ
舌痛症は、見た目に異常が少ないため周囲に理解されにくい一方で、本人にとっては大きなストレスとなる症状です。特に、ストレス、自律神経の乱れ、更年期、胃腸機能低下、口の乾燥などが複雑に関係していることがあります。
中医学では、以下のような観点を総合的に考えて体質を整えていきます。
- 気の巡り
- 熱
- 潤い不足
- 胃腸の弱り
「検査では異常がないのにつらい」「原因が分からず不安」という方ほど、体全体のバランスを見直すことが改善のヒントになるかもしれません。
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