2026.01.21
現代社会において、慢性腎臓病(CKD)は「新たな国民病」とも呼ばれ、成人の約13人に1人が患っているとされています。
健康診断でクレアチニン値の上昇やeGFR(推定糸球体濾過量)の低下を指摘され、将来的な透析への不安から漢方相談に訪れる方が増えています。
本記事では、漢方(中医学)の視点から腎臓病・腎機能低下をどのように捉え、どのような対策が有効なのか解説します。
慢性腎臓病(CKD)とは
CKDは、腎臓の働きが徐々に低下していく病気の総称です。腎臓は、血液を濾過して老廃物を尿として排出するだけでなく、体内の水分量や電解質(ナトリウム、カリウムなど)の調節、血圧のコントロール、血液のpHを弱アルカリ性に保つといった、生命維持に欠かせない多機能な役割を担っています。
CKDの恐ろしさは、初期には自覚症状がほとんどないことにあります。症状が現れる頃には、すでに腎機能がかなり低下しているケースが多く、放置すれば最終的には「尿毒症」となり、人工透析や腎移植が必要になります。透析は週に数回、長時間拘束されるため、生活の質(QOL)を著しく低下させてしまいます。
医学的には、腎臓の障害はその原因によって以下の3つに分類されます。
①腎前性(急性腎障害)
脱水、大量出血、心不全など、腎臓に流れる血流自体が不足することで尿を作れなくなります。
②腎性
腎臓そのものの組織がダメージを受けるものです。糖尿病、高血圧、脂質異常症などの生活習慣病が主な原因ですが、IgA腎症のような免疫異常や、特定の薬剤による「間質性腎炎」も含まれます。
③腎後性
前立腺肥大や結石などにより、尿の通り道が塞がることで腎臓に負担がかかる状態です。
腎機能を知るための「数値」の読み方
腎機能の状態を正しく把握するために、2つの指標が重要です。 eGFRは下がれば下がるほど、クレアチニンは上がれば上がるほど、腎機能が低下していることを示します。
eGFR(推定糸球体濾過量)
「腎臓が1分間にどれだけの血液を濾過できるか」を示す数値です。正常値は60以上で、値が低いほど腎機能が低下していることを意味します。
クレアチニン値
クレアチニンは筋肉の老廃物で腎臓から排泄されます。腎機能が落ちると排泄できずに血液中に溜まるため、数値が上がれば上がるほど腎臓が悪いことを示します。
慢性腎臓病(CKD)のステージ分類
CKDは、腎機能の低下の程度によってステージ1〜5に分類されます。この分類の基準となるのが、先ほど触れたeGFR(推定糸球体濾過量)です。
ステージを正しく理解することは、「今どの位置にいて、何をすべきか」を知るうえで非常に重要です。
ステージ1(eGFR 90以上)
腎機能はほぼ正常ですが、蛋白尿や血尿など、腎障害のサインが見られる段階です。
自覚症状はほとんどなく、「異常なし」と言われて放置されやすい時期でもあります。
ステージ2(eGFR 60〜89)
軽度の腎機能低下。
この段階でも症状は乏しいですが、生活習慣病(高血圧・糖尿病)を背景に、静かに腎機能が落ち始めているケースが多く見られます。
ステージ3(eGFR 30〜59)
中等度の腎機能低下。
多くの方が健康診断で初めて指摘されるゾーンです。持続的(3か月以上)に60を下回るとCKDと判断されます。
むくみ、夜間尿、疲れやすさなどが出始め、漢方相談が最も増えるステージでもあります。
ステージ4(eGFR 15〜29)
高度の腎機能低下。
尿毒素が体内に溜まりやすくなり、食欲不振、吐き気、貧血、強い倦怠感などが現れます。
西洋医学では透析準備が始まる段階です。
ステージ5(eGFR 15未満)
末期腎不全(尿毒症)。
自力で老廃物を排泄できなくなり、透析や腎移植が必要となります。
重要なのはステージ3(eGFR 30〜59)からの対策です。
CKDは一度進行すると、自然に元へ戻ることはほとんどなく、西洋医学では進行を止める根本的な治療法は確立されていません。
見逃してはいけない初期サイン
腎臓病の初期症状として比較的気づきやすいサインの一つが「顔のむくみ」、特に目の周りの腫れです。足のむくみは運動不足や筋肉量の低下でも起こりますが、顔までむくんできたら腎機能の低下を疑うべきです。
また、尿が何度も繰り返し異常に泡立つ場合は、血液中のタンパク質(アルブミン)が漏れ出している可能性があります。糸球体は一度壊れるとなかなか再生しないため、この段階で早急に対策を打つことが、5年後、10年後の透析回避に繋がります。
現代の落とし穴「水分の摂りすぎ」
健康のために「1日2Lの水を飲む」という常識がありますが、腎機能が低下している人にとっては、これが大きな負担となります。
日本人は食事から1.2L〜1.5Lほどの水分を摂取しています。そこにさらに2Lの水を加えると、腎臓の処理能力を超えてしまい、組織に水が溢れる「水中毒」の状態を招きます。
これは「自分の飲んだ水で溺れる」ようなもので、血液中の電解質バランスが崩れ、心臓に悪影響を及ぼすリスクもあります。
腎臓を守るためには、喉が渇いた時に適量を飲むという姿勢が大切です。
中医学の「腎」と西洋医学の「腎臓」の違い
中医学で腎機能のことを考える時に重要なのは、中医学の「腎」が病院で検査する「腎臓」よりも広い概念を指すということです。
- 西洋医学の腎臓: 主に尿を作り、体内の老廃物を排泄し、電解質やpHのバランスを整える働き。
- 中医学の「腎」: 上記の排泄機能に加え、生殖、成長、ホルモン(内分泌)、遺伝などの機能も含まれます。
そのため、病院の検査数値が正常であっても、中医学的に「腎が弱い(腎虚)」と判断されることがあります。逆に、腎機能を守るためには、単に尿を出すだけでなく、これら「生命のエネルギー」全体を底上げする視点が必要になります。
中医学による治療3大戦略
中医学的には、腎機能低下の原因を「腎虚(じんきょ)」「湿濁(しつだく)」「瘀血(おけつ)」の3つに分類し、これらを組み合わせてアプローチします。
腎虚
「腎」は水分代謝をコントロールし、尿を生成・排泄する役割を持ちます。「腎」は、温める働きの「腎陽」と鎮める働きの「腎陰」に分かれます。「腎」を補うには、どちらのタイプか見極めて対処することが重要です。
・腎陽虚
身体が冷えて代謝が落ち、水が溜まりやすくなっているタイプです。腎が弱ることで体内に余分な湿が生じると、やがて消化吸収を行う脾にも影響が及ぶことがあります。
・腎陰虚
身体がのぼせ、血圧が高く、めまい、耳鳴りなどがあるタイプです。
湿濁
身体に溜まった要らないゴミのことを湿濁と呼びます。この湿濁は、さらに腎機能を低下させる原因となります。
クレアチニンが上昇しているということは、既に湿濁が存在していることを意味します。腎を補うだけでなく、利水作用を持った漢方を併用することが重要です。
瘀血
血流が滞った「瘀血」は腎の働きを低下させることになります。
湿濁によって水が汚れると「瘀血」はさらに悪化することになります。
西洋医学的にも腎臓の糸球体は毛細血管の塊で、動脈硬化の影響を受けやすい組織です。
活血作用を持った漢方を用いることで、腎に流れ込む微小な血流を改善することが必要です。
まとめ
慢性腎臓病(CKD)は、静かに進行し、気づいた時には腎機能が大きく低下していることも少なくありません。特にステージ3以降は、西洋医学では「進行を遅らせる」ことが治療の中心となり、元の腎機能に戻すことは難しいのが現実です。しかし一方で、この段階こそが、将来の透析を回避するために最も重要な分岐点でもあります。
中医学では、腎機能低下を単なる「腎臓の病気」としてではなく、腎の弱り、水分代謝の乱れ、血流障害といった全身のバランスの崩れとして捉えます。そのため、腎を補い、湿濁を取り除き、血流を守るという多角的なアプローチが可能です。これは、検査数値だけを追いかける治療とは異なり、体全体の力を底上げしながら腎臓を守るという考え方です。
自覚症状がないけれど、健康診断で腎機能低下を指摘された場合は、早めに対策をご検討ください。
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