「トイレで血が出る」「痔がなかなか良くならない」
そんな症状が続くと、不安を感じる方も多いのではないでしょうか。
実は、痔による出血にはいくつかのタイプがあり、中医学的に体質を考えると「血熱(けつねつ)」が原因となっているケースが少なくありません。
血熱による痔の場合は、他の痔薬、出血を止める薬では改善しづらいのが特徴です。
今回ご紹介する槐角丸(かいかくがん)は、古くから血熱による痔出血・下血に用いられてきた漢方処方です。
単に血を止めるのではなく、出血の原因となる「熱」を冷まし、体の内側から整えていく点が大きな特徴です。
この記事では、中医学の視点から槐角丸について分かりやすく解説していきます。
槐角丸の概要
槐角丸(かいかくがん)は、痔疾患をはじめとする「血熱」による出血症状に用いられてきた漢方処方です。痔疾患だけでなく、血尿、鼻血、不正出血、潰瘍性大腸炎などにも使用されます。
中医学では「血熱妄行」という考え方があり、「血に余分な熱が加わることで、本来あるべき流れを外れて出血してしまう状態」を指します。
通常、血は「脈(血管)」の中を穏やかに全身を巡っています。しかし、何らかの原因で血に強い熱が生じると、その熱によって血の流れが荒くなり、血管を押し破るようにして外へ漏れ出すと考えられています。
血熱を冷まし、止血の働きを持った槐角丸は、血熱による出血症状になくてはならない処方です。
槐角丸の原典
槐角丸の原典は、中国・宋代の『太平恵民和剤局方』です。この書物は、「太平惠民局」という公的な薬局で使用された処方をまとめた世界初の官製製剤基準書です。
槐角丸はその中で「腸風臓毒」を治療する方剤として記載されました。
「腸風」「臓毒」とは、現代的に言えば
- 腸内にこもった熱
- 血液の過剰な熱化
- それに伴う炎症・出血
のことを指しており対する処方として位置づけられてきました。
当時から、食べ過ぎや飲み過ぎ、辛い物の摂取過多などが「腸に熱がこもる」原因と認識されており、その結果として起こる痔や出血に対処できる処方です。
効能・効果
槐角丸の効能・効果は、以下の通りです。
内痔核、外痔核、裂肛、痔出血、痔の痛み、痔疾に伴う便秘
中医学的に効能効果を深堀りすると、以下の特徴があります。
① 清熱涼血(せいねつりょうけつ)
血中の余分な熱を冷まし、出血の原因そのものを鎮めます。
② 止血
単に血を止めるのではなく、「熱を冷まして自然に止血する」点が大きな特徴です。
③ 痔疾の腫脹・疼痛の改善
肛門部の熱感、腫れ、ヒリヒリ感などを和らげます。
炎症を抑えることで、血管の拡張を鎮める方向性の処方構成となっており、出血を伴う炎症性の痔と非常に相性が良いといえます。
処方構成
槐角丸は、以下のような生薬で構成されています。
・槐角(かいかく)
主薬。清熱涼血・止血作用が強く、血熱による出血を抑える。
・地楡(ちゆ)
涼血止血・消腫作用。下血や痔出血に多用される生薬。
・黄芩(おうごん)
清熱燥湿。炎症・充血を抑える。
・枳殻(きこく)
気の巡りを整え、腸内の停滞を防ぐ。
・当帰(とうき)
血を養いながら巡らせ、出血による血の不足を防ぐ。
・防風(ぼうふう)
風邪(ふうじゃ)を除き、肛門部の違和感や痒みを和らげる。
清熱・止血だけでなく、血を補い巡らせる生薬が入っている点が、処方のバランスを優れたものにしています。
槐角丸が合う人の特徴
以下のような方は、槐角丸が合いやすいと考えられます。
①熱タイプの痔出血がある人
- 鮮血がポタポタ出る
- 出血量が比較的多い
- 色が赤く勢いがある
② 便秘傾向で熱がこもりやすい人
- 便が硬い
- 排便時にいきむ
- お腹や顔がほてりやすい
③ 体力が比較的あり、熱症状が目立つ人
- 顔が赤い
- のぼせやすい
- 辛い物・お酒が好き
④肛門部に熱感・腫れ・痛みがある人
- ヒリヒリする
- 熱っぽい感じがする
痔は血流の悪さが原因となることも多いため、出血がある場合は血流改善と止血作用を併せ持った田七人参も候補になります。
しかし、血熱による痔に対しては温性の田七では改善することができず、槐角丸のような涼血作用を持った漢方薬が必要になります。
槐角丸が合わない人
一方、以下のような場合は注意が必要です。
① 冷えが強い人
- 下半身が冷える
- 温めると楽になる痔
- 冷たい飲食で悪化する
→ この場合は「血熱」ではなく「寒」や「虚」が関与している可能性があります。
② 気虚・血虚タイプの出血
- 出血量は少ないがダラダラ続く
- 疲れると出血する
- 顔色が青白い
③ 高齢者・体力低下が著しい方
清熱作用が強いため、体力が低下している場合は慎重な判断が必要です。
改善例
50代男性。
数年来、排便時の鮮血出血と肛門の腫れに悩まれて来局。
- 便秘傾向
- 辛い物とお酒が多い
- 顔色が赤く、のぼせやすい
中医学的に「血熱下注(けつねつげちゅう)」と判断し、槐角丸を中心に調整。
服用開始から2週間ほどで
出血量が明らかに減少
排便時のヒリヒリ感が軽減
1か月後には出血はほぼ消失し、便通も安定しました。
※体質・状態により効果には個人差があります。
まとめ
槐角丸は、「血が熱を帯びることで起こる痔出血・下血」に対して、原因から整える非常に理にかなった漢方処方です。
✔ 鮮血の出血
✔ 肛門の熱感・腫れ
✔ 便秘・のぼせ体質
こうした特徴が揃う場合、槐角丸は有力な選択肢となります。
ただし、痔の原因は体質によって大きく異なるため、
「誰にでも合う万能薬」ではありません。
自己判断せず、体質を見極めた上での使用が大切です。
漢方薬を選ぶ際に迷う場合はお気軽にご相談いただければ幸いです。
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