西洋医学での診断
人は呼吸をすることで外界から酸素を取り入れ、体の中の二酸化炭素を体外へ放出しています。
その一連の動作を行う呼吸器は、気道(鼻腔、咽頭、喉頭、気管、気管支)と肺です。その気管、気管支が粘膜の浮腫、粘稠な分泌物、その他何らかの刺激に対して反応性を高め、気道が狭くなり、呼気性呼吸困難を起こすことをいいます。
喘息(ぜんそく)の原因
■気管支喘息
- アレルギーによるもの
- 感染(風邪症候群や気管支炎などの呼吸器感染症など)
- 精神身体的要因
- 内分泌異常によるもの
- ほこりや花粉などの異物によるもの
- 急激な気温の変化
- ストレスによるもの
■小児喘息
- アレルギーによるもの
- 麻疹、気管支炎、肺炎などに罹患した後に発症することがある
- 居住環境
- 食生活の変化
喘息(ぜんそく)の症状
■気管支喘息
- のどや胸がつまるような感じがする
- 呼吸困難(横臥できず、起座呼吸を行う)
- チアノーゼ
- 呼気時に笛声音または喘鳴を発する
- せきや痰を体外へ排出すると呼吸が楽になる
- 発作がおさまってきたら、咳も軽減し痰の粘りも少なくなる
■小児喘息
- くしゃみ、鼻汁、鼻詰まり
- 呼吸困難
- 顔面蒼白
- ゼーゼーという喘鳴が聞こえる
- 発汗
喘息(ぜんそく)の治療
■気管支喘息
- 薬物療法
気管支拡張剤、鎮痛剤、去痰剤を使用し治療を行います。症状が重いときには、副腎皮質ステロイド系の薬を使用します。 - その他
- 食事の中でアレルゲンになりやすいといわれる物は避けるようにする
- 嗜好品(タバコ、お酒)は、気道を刺激するので避ける
- 部屋などの生活環境は、清潔に保つ
- 精神的、感情的な障害を取り除く
- せきや痰を体外へ排出すると呼吸が楽になる
- 冷暖房を使用する際には、室内の温度を適切に保ち、換気などを行う
■小児喘息
アレルギー治療から行います。
発作などが起きた時は、発汗なども伴うため、水やジュースなどの水分を少量ずつ飲ませます。
漢方での診断
子供の時に喘息でも、成長するにつれて漢方でいう「腎(じん)」 が少しずつ充実してくるため、自然と改善してくることもあります。
しかし最近では、生まれたときから「腎」 が弱く、充実しきれない方も多く見受けられます。このような方は状態が慢性化しやすいので、特に予防が大切です。
喘息は、漢方でいう五臓の中の「肺(はい)」の機能がうまく働かなくなった状態です。また、関連する臓器としては、「腎(じん)」、「脾(ひ)」、「肝(かん)」 が挙げられます。
肺
呼吸を調節しています。また、身体に必要な水分を全身に撒く働きがあり、外からの邪気(悪影響を与える因子)から守る役割も担っています。
腎(じん)
生命力の根本となる臓器で、腎が弱ると身体全体に影響してきます。逆に他の臓腑の乱れは、いずれは腎に影響してきます。
また、成長や老化とも密接なつながりがあり、年と共に弱ってくるため、日々の生活の中で補っていくことが大切な臓器です。
脾(ひ)
栄養や水分の消化吸収、代謝に関与しています。また、「脾」と「肺」は母子に例えられ(「脾」が母、「肺」が子)、「脾」が「肺」を養うという関係があります。
肝(かん)
気をスムーズに流す働きをしています。
また、感情のコントロールとも深く関係しており、精神面と「肝」の気の流れは、相互に影響しあっています。
例えば、ストレスが多いと「肝気」の流れも滞り、またその逆に「肝気」の流れが滞ると、イライラしやすくなるなど精神面に影響がでてきます。
「肺」の機能障害の場合
《要因》
- 気候の変化、急激な温度変化によって風寒(ふうかん)・風熱(ふうねつ)の邪気(じゃき)の影響を受ける。(「風邪」もこれに入ります)
- 花粉、粉塵などが入り込む
《症状》
- 呼吸がせわしい(呼吸困難)、呼吸音が高い など
- 寒の影響が大きい場合
薄い痰が多く出る・顔色が暗くて青っぽい・のどは渇かないが、温かいものを飲みたがる・寒い日や身体を冷やしたときに発作が出やすい・冷えがあり寒がる・頭痛 など - 熱の影響が大きい場合
痰の色は黄色~白色・痰は粘って出しにくい・顔が赤い・のどが渇く・口が苦い・舌が赤い・舌苔が黄色い など
《漢方》
邪を取り除くものを使います。
《予防》
抵抗力が落ちると、邪気を追い払う力が弱まります。普段からの予防を心がけましょう。
「脾」が弱っている場合
《要因》
もともと胃腸が弱い、飲食の不摂生を続けてきた、胃腸を冷やす など
《症状》
飲食の不摂生で発作が出やすい、疲れやすい、息切れ、声に力が無い、めまい、下痢あるいは便がゆるい、もたれやすい、脂っこいものなど消化の悪いものを食べると便がゆるくなりやすい など
「脾」が弱いと痰が発生しやすく、「余分な水分(痰)が肺の機能を邪魔している場合」の症状がみられるようになります。また、「脾」が弱いために「肺」が補われない場合は、「肺が弱っている場合」の症状にもつながってきます。
《漢方》
「脾」を元気にしながら、水分の代謝を手助けしていくものを使います。
「腎」が弱っている場合
《要因》
虚弱体質、風邪や咳の慢性化、喘息の慢性化、過労、病後、母親が高齢出産した子供である など
《症状》
息が深く吸えない、息が続かない、動くと喘息が悪化する、疲れやすい、症状を繰り返す など
また状態によって、手足が冷える、むくみやすい、口が渇く、ソワソワする、顔がほてるなどがみられます。
《漢方》
陰陽のバランスをみながら「腎」を補っていくものなどを使います。
《予防》
「腎」は、各臓腑が元気に働くための根本(陰陽の根本)となる臓器です。したがって「腎」に影響が出てくると慢性化しやすくなります。また、補っていくのにも時間がかかるため、毎日の積み重ねが大切です。