大腸ガンとは
大腸ガンは、長さ約2mの大腸(結腸・直腸・肛門)に発生するガンで、日本人ではS状結腸と直腸にガンができやすいといわれています。
大腸ガンの発生の仕方には、2つあると考えられています。
1つは、大腸の壁のもっとも内側にある粘膜にできたポリープ(良性の腫瘍)が、ガンに変化する場合です。
もう1つは、粘膜から直接ガンが発生する場合です。
大腸ガンの発見に関しては、便に血液が混じっているかどうかを検査する便潜血検査が有効であることが明らかになっており、症状が出る前に、検診などでの早期発見が可能です。早期に発見できれば、ガンを完全に取り除ける可能性が高くなります。
毎年約6万人が罹患し、罹患の頻度は男性、女性ともに同じで、60代がいちばん多く、70代、50代と続きます。若年者の大腸ガンでは遺伝的な素因もあるようです。
日本では、女性のがんの死亡率の1位を占めています。アメリカ合衆国においては、3番目に多いガンで、ガン死の原因として2番目に多く、生涯に大腸ガンに罹患する確率は約7%と言われています。日本でも罹患する確率は胃ガンを追い越し、肺ガンについで2番目に多くなっています。
■部位別死亡者数
男性:1位 肺 2位 胃 3位 大腸 4位 肝臓 5位 膵臓
女性:1位 大腸 2位 肺 3位 胃 4位 膵臓 5位 乳房
■部位別患者数
男性:1位 胃 2位 肺 3位 大腸 4位 前立腺 5位 肝臓
女性:1位 乳房 2位 大腸 3位 胃 4位 肺 5位 子宮
※大腸を結腸と直腸にわけた場合、順位が変動します。
出典:国立がん研究センター がん対策情報センター 最新がん統計より
大腸ガンの原因
元々肉食が少なく野菜などの摂取の多かった食習慣が欧米化し、脂肪の摂取量が増えてくるにしたがって、大腸ガンの死亡率も次第に高くなってきています。野菜などの繊維物を消化するには、長い腸が必要です。
日本人の腸に動物性脂肪が多く入ると、腐敗の原因にもなると言われています。
大腸ガンの死亡率や罹患率は、動物性脂肪(肉類、卵、乳製品など)や炭水化物、砂糖などの摂取が多い人ほど高く、逆に、穀類や豆類などの植物性繊維の多い食事を摂っている人の大腸ガンの死亡率や罹患率が低いという研究結果もあります。
また、大腸ガンでは、直系の親族に大腸ガンの人がいることは、大腸ガンのリスク要因とされています。
肥満や飲酒なども大腸ガンリスクとされています。
大腸ガンの症状
一般に早期の大腸ガンであれば自覚症状はなく、健康診断や人間ドックで発見されます。
まったく症状が現れない場合も少なくありません。ただし、進行の状況では腸内容の通過障害を起こす場合があります。左側結腸に存在すると便通異常、腹痛、腹部膨満感などがあり、血便を伴うことがありますが、痔などの良性疾患でも同じような症状があります。
しかし、右側結腸ではこれらの症状は乏しく貧血、体重減少、腫瘤触知などの症状となります。これは、上行結腸では内容物がまだ液体であるからであると言われています。
左側結腸の全周性病変になると排便困難、便秘、イレウス(腸閉塞)を起こします。
大腸ガンの治療法(東洋医学)
大腸ガンの場合、漢方薬や自然健康食品を選ぶときはどうするのか?
東洋医学・中医学では、患者さんのタイプをいくつかにわけます。
東洋医学では気・血・水(きけつすい)といって、気力パワー、血液の循環、水やリンパ液の流れで健康が決まるといわれています。
■肝うつ、気(ストレス)の流れが悪いタイプ
ストレスが大きくかかったり、下痢をしやすかったり、栄養不足で血液を貯蔵する肝臓(西洋医学の肝臓ではなく、その周辺部やかんのむし、ストレスを含む)の働きが悪くなると、肝臓の解毒が上手くできず、気持ちを安定する事が難しくなります。
結果的に自律神経が乱れて腸内が緊張し過ぎて、便秘につながりやすくなります。お腹が張ったり、ガスが臭くなったりと便秘は腸内での腐敗が進み悪玉菌が増えてしまいます。悪玉菌の温床では、発ガン率も高くなります。
■血液がきれいでなく、血の流れが悪いタイプ
血液がサラサラでなく、循環も悪いタイプです。血液の流れが悪いと、痛みが生じます。
大腸の血管の流れが悪くなると「便秘」や「痔」「ポリープ」になりやすく、体温も低くなりがちです。
癌の発生しやすい低体温の原因にもなります。
■水分が滞って、体内の水の流れが悪いタイプ
体内の水分がストレスなどにより流れが悪くなると、悪い水(東洋医学では「たん」といいます。鼻やのどに詰まる「痰」とは違います)が体をめぐり、良い水の流れが滞ります。舌もむくんで厚ぼったく、歯の跡がつくこともあります。水分代謝が悪いと、腸内では下痢や便秘の原因にもなります。
■人間の健康を支える3つの柱「気(ストレス)・血液・水分」が弱って、総合的に体力が弱っているタイプ
3つともが弱っていますので、体温が低下し寒がりで、吐き気があり、お腹のはりが出て、痛みや下痢、便秘になります。
東洋医学では「薬草の働き」を上手に利用
○体質に関係なく使う薬草、ガンによく使われる生薬
- 白花蛇舌草(びゃっかじゃぜつそう)
- 半枝蓮(はんしれん)
- 冬虫夏草
- 霊芝
- 田七人参 など
○気力パワーをつける薬草、ストレスに作用する薬草
- 朝鮮人参(ちょうせんにんじん)
- 黄耆(おうぎ)
- 白朮(びゃくじゅつ)
- 山薬(さんやく=山芋のほしたやつです)
- 甘草(甘い味の薬草 肝臓とは関係ありません)
- 大棗(たいそう 大型のプルーン ナツメとも呼ばれます)
- 茯苓(ぶくりょう)
- 陳皮(ちんぴ)
- 青皮(せいひ)
- 枳実(きじつ)
- 枳穀(きこく)
- 香附子(こうぶし)
- 木香(もっこう)
- 烏薬(うやく) など
○体をあたためて、体の成分の新旧入れ替え(新陳代謝)を良くします
- 附子(ぶし、トリカブトの根です。少量ではとても良い薬です)
- 桂皮(けいひ、シナモン、ニッケのことです)
- 乾姜(かんきょう、しょうがを蒸して干したものです)
- 杜仲(とちゅう)
- 枸杞子(くこし。赤いクコの実のことです)
- 骨砕補(こつさいほ)
- 冬虫夏草(とうちゅうかそう)
○血液をきれいにし、流れをよくしてくれます
- 田七人参(でんしちにんじん)
- 艾葉(がいよう)
- 当帰(とうき)
- 芍薬(しゃくやく)
- 熟地黄(じゅくじおう)
- 何首烏(かしゅう)
- 竜眼肉(りゅうがんにく。中華料理で出てくるデザート。ローガンのほしたもの)
- 川弓(せんきゅう)
- 延胡索(えんごさく)
- 欝金(おうごん)
- 莪朮(がじゅつ)
- 益母草(やくもそう)
- 紅花(べにばな)
- 牛膝(ごしつ)
- 桃仁(とうにん)
- 牡丹皮(ぼたんぴ)
- 三稜(さんりょう)
- 丹参(たんじん)
- 地黄(じおう)
大腸ガンの治療法(西洋医学的手法)
■内視鏡治療
内視鏡治療とは、小型カメラと切除器具がついた内視鏡を用いて、画像を見ながら、大腸の内側からガンを切除する治療法です。
ガンが存在する場所や大きさ、浸潤の深さなどを総合的に評価して、ガンを安全かつ完全に切除できると判断される早期ガンが内視鏡治療の対象となります。
内視鏡でガンを切除する代表的な方法に、ポリペクトミーと内視鏡的粘膜切除術(EMR)があります。
ポリペクトミーは、内視鏡を通してスネアと呼ばれるループ状の細いワイヤ(針金)の輪をポリープの茎に引っかけ、高周波電流を流して粘膜を焼き切ります。
EMRは、病変の下層部に生理食塩水などを注入して病変を浮き上がらせてから、スネアで病変を含む粘膜を焼き切ります。
【内視鏡治療の合併症】
内視鏡治療は、通常は痛みもなく、合併症が起こることは稀ですが、合併症として、出血と穿孔(大腸に穴が開く)があります。摘出した病変は顕微鏡で十分に調べますが、その結果によっては、さらに外科治療が必要となる場合があります。
■外科治療(手術)
大腸ガンの治療は、手術による切除が基本です。外科治療では、ガンのある腸管とリンパ節を切除します。
切除するリンパ節の範囲は、ガンの部位と手術前に予測したガンの進行度を考慮して決定され、早期ガンでは、ガンだけを切除して、リンパ節は切除しないこともあります。
ガンが周囲の臓器に直接浸潤してくっついている場合には、それらの臓器も一緒に切除します。
【外科治療(手術)の合併症】
手術により、軟便や下痢、便秘などの異常を生じることがあります。
また、おなかの張りや腸閉塞、縫合不全(腸管のつなぎ目がうまくつながらないこと)や創感染(手術のキズ口の細菌感染)などの合併症を生じることもあります。
直腸ガンの場合は、すぐ周りに神経や筋肉があるため、切除する範囲によってはガンと一緒に神経や筋肉を切除するため、排便、排尿、性機能に障害が起きることがあります。
■放射線治療
主に直腸に発生したガンにおいて、手術前にガンのサイズを縮小し、治癒率の向上や、肛門を温存する目的、あるいは再発予防のため、放射線治療が行われることがあります。
また、切除が難しいガンによる痛みや出血などの症状緩和、骨転移による痛みや脳転移による神経症状などを改善する目的で行われることもあります。
放射線の照射時期は手術前、手術中、手術後の3種類がありますが、手術前に照射することが一般的です。
また、抗ガン剤治療と一緒に行うこともあります。
【放射線治療の副作用】
放射線治療の副作用は、主に照射された部位に起こるため、その部位によって症状は異なります。
治療期間中に起こる副作用には、全身倦怠(けんたい)感、嘔気(おうき)、嘔吐、食欲低下、白血球減少などが挙げられます。
また、肛門付近に照射された場合は、加えて下痢、肛門痛、頻尿、排尿時痛、皮膚炎、会陰部(えいんぶ)皮膚炎(粘膜炎)などが起こる可能性があります。
症状の現れ方には個人差があり、治療が終了して数ヵ月以上経ってから起こることもあり、出血や炎症などが腸管や膀胱に現れることがあります。
■薬物治療
大腸ガンの抗ガン剤治療は、手術後のガン再発の予防のための補助治療として、あるいは根治目的の手術が困難な進行ガンや再発ガンにおいて延命と生活の質(QOL)の向上を目的に行われます。
【薬物(抗ガン剤治療)の副作用】
抗ガン剤はガン細胞だけでなく、正常な細胞にも影響を及ぼします。特に、髪の毛、口や消化管などの粘膜、赤血球や白血球などの血球を作る骨髄など細胞分裂が盛んな細胞ほど影響を受けます。そのため、脱毛や口内炎、腹痛、下痢が起こったり、白血球や血小板の数が減少したりすることがあります。
その他、全身の倦怠感や食欲不振、吐き気、味覚障害が生じたり、肝臓や腎臓の障害や神経症状(めまい、手足のしびれなど)が出ることもあります。
副作用は、使用する抗ガン剤により異なり、また出現する副作用やその程度には個人差もあります。
そのため、治療前によく医師や薬剤師から説明を聞ききましょう。
抗ガン剤の副作用による苦痛を軽くする方法や予防する薬の開発も進んでおり、特に吐き気や嘔吐はコントロールできるようになっています。副作用が著しい場合には、治療薬を変更したり、治療の休止や中断を検討することもありますので、治療中でも医師、薬剤師とよく相談しましょう。