肺ガンとは
肺ガンは、肺の気管、気管支、肺胞の一部の細胞がなんらかの原因でガン化したもので、日本におけるガン死亡者数が最も高い病といわれています。
近年、罹患者数が増加してきていて、特に、男性の肺ガンの罹患率、死亡率は急激に上昇しています。
進行するにつれてまわりの組織を破壊しながら増殖し、血液やリンパの流れにのって広がっていきます。
近年、肺ガン検診を受ける方の割合が増加したこともあって、発見率は向上しています。
しかしながら、肺ガンは初期症状がなかなか現れず、初期段階で感じる自覚症状もほとんどないため、発見された際にはすでに進行しているというケースが多いという特徴があります。
■部位別死亡者数
男性:1位 肺 2位 胃 3位 大腸 4位 肝臓 5位 膵臓
女性:1位 大腸 2位 肺 3位 胃 4位 膵臓 5位 乳房
■部位別患者数
男性:1位 胃 2位 肺 3位 大腸 4位 前立腺 5位 肝臓
女性:1位 乳房 2位 大腸 3位 胃 4位 肺 5位 子宮
※大腸を結腸と直腸にわけた場合、順位が変動します。
出典:国立がん研究センター がん対策情報センター 最新がん統計より
肺ガンの原因
肺ガンは、肺の細胞の中にある遺伝子に傷がつく(変異する)ことで生じます。
現在のところ、はっきりしている原因は喫煙です。
たばこの煙のなかには、4000種類以上の化学物質が含まれており、そのうち約200種類は有害物質で、40種類以上は発ガン促進物質であるということが知られています。
これらの発ガン物質が複合的にはたらいて、肺ガンをつくります。(これを化学発ガンと呼びます)
つまり肺がガン、たばこの煙という発ガン物質によってできるガンです。
たばこの量と肺ガンになる危険(リスク) には相関関係があり、一日20本吸う人は非喫煙者にくらべておよそ10倍程度肺ガンで死亡しやすく、さらに喫煙開始年齢が早いとさらに肺ガンのリスクは確実に高くなります。
肺ガンは喫煙との関係が非常に深いガンですが、たばこを吸わない人でも発症することがあります。周囲に流れるたばこの煙を吸うことにより発症リスクが高まることもわかっていて、他人の吐いたたばこの煙を吸うことによって、肺ガンになりやすくなることも知られています。
これを受動喫煙といいますが、夫がヘビースモーカーの場合、妻の肺ガンの危険は2-3倍程度上昇するといわれています。
肺ガンの原因にはたばこ以外にも、大気汚染、有害物質(アスベスト、鉛、クロムなど)があります。
私たちの生命活動に不可欠の呼吸ですが、人間は呼吸をするたびに空気中の様々な有害物質を吸い込んでいます。
これらの有害物質は、気管である程度取り除かれるものですが、肺まで届くものも決して少なくありません。
気管で取り除き切れなかった有害物質は、肺の末梢部分にある肺胞で感知されて除去されるのですが、この時に発生する活性酸素が過剰になると、正常な細胞まで傷をつけてしまいます。このことが、肺ガンを発症させる一因となっているのです。
特に、中国では環境汚染によって、国民の肺ガン発症率と死亡率が高い状態が続いています。
中国医学科学院・腫瘤医院が過去10年間の肺ガン患者1万5000人余りのデータを分析し、「PM2.5(微小粒子状物質)は肺胞の深い部分に入り込むことができ、腺ガン(臓器の分泌腺組織に発生するガン)の発生と一定の因果関係を持つ」と指摘しています。
肺ガンの種類と症状
肺ガンは、 小細胞肺ガンと非小細胞肺ガンに大別されます。肺ガン全体の約10~15%が小細胞肺ガン、残る85~90%が非小細胞肺ガンです。小細胞肺ガンと非小細胞肺ガンとでは、病気の特徴や薬の効きめが大きく異なっています。
■小細胞ガン
小細胞肺ガンは、増殖のスピードが速く、見つかった時にはすでに他の臓器へ転移していることが多い、極めて悪性度の高いガンです。その反面、抗ガン薬や放射線が比較的よく効くことから、多くの場合、手術ではなく、抗ガン薬や放射線で治療を行います。
喫煙は、肺ガンの発症を促すリスク要因として広く認知されていますが、小細胞ガンの場合、喫煙との関連が肺ガンの中でも特に強いとされています。
肺ガンに共通してみられる長期間の空咳、痰(血痰)、喘鳴(ぜいめい)、胸の痛みなどがあります。
■非小細胞肺ガン
小細胞肺ガンに比べると増殖のスピードは若干遅いものの、抗ガン薬や放射線が効きにくいガンです。
早期に見つかり手術で完全に取り除くことができれば、十分に治る見込みがあります。
■腺ガン
腺ガンは、肺ガンの中で最も多く、喫煙が発症の直接的な原因ではないと考えられています。
発生頻度も喫煙率の低い女性の方が高く、非喫煙者の方にも多く発症するという特徴があります。
早期の肺腺ガンの場合は、咳や胸の痛みなどもほとんどないため、定期的なガン検診や健康診断などで偶然見つかるケースが多いです。
ガンの進行に伴って、肺ガンに共通してみられる長期間の空咳、痰(血痰)、喘鳴(ぜいめい)、胸の痛みなどがみられる他、末梢部分(気管支の細い部分)でガンが大きくなるため、胸膜に影響を及ぼし、胸水が溜まるといったケースも多く見られます。
また、進行が進むとリンパ節への転移や遠隔転移が起きやすいため、身体全体に酷い倦怠感や激痛を感じることもあります。
さらに、神経が侵されることによって、腕や胸に、肩などに痛みやしびれを感じたり、顔面や上肢に浮腫(むくみ)が起こることも、珍しくありません。
■扁平上皮ガン
扁平上皮ガンは、肺ガンの中で腺ガンに次いで発生率が高いガンです。
扁平上皮ガンは、喫煙との関連が大変深いガンと言われ、非喫煙者はまずかかることのない肺ガンだとされています。男女別の発症率をみても、圧倒的に男性の方が高いです。
扁平上皮ガンは、初期症状があまりでないガンです。
肺の中心部の気管支にできる肺門型ガンのため、ある程度進行すると、酷い咳や血痰といった症状が現れるようになります。
長期間の空咳や微熱、胸の痛み、痰(血痰)などがみられる場合もありますが、風邪などの症状とよく似ているため、見逃しやすいものとなっています。
さらにガンが進行した場合は、息切れや喘鳴(ぜいめい)などがみられるようになり、ガンが拡がり胸壁や胸膜にまで浸潤した場合には、強い胸の痛みや呼吸困難が起きるというケースもあります。
また、さらに扁平上皮ガンの進行が進み、神経が侵された場合には腕や肩に激痛を感じたり、上肢や顔面に浮腫(むくみ)がみられることも少なくありません。
扁平上皮ガンは、他の種類の肺ガンに比べると転移のスピードが遅く、早期発見が出来れば外科手術によって治癒することが出来る可能性が高いガンです。
■大細胞ガン
肺ガンのうち大細肺ガンは、腺ガンや扁平上皮ガン等と比較して珍しいガンになります。大細胞ガンの特徴は「とくに大きな特徴がない」点と言われています。
肺ガン全体における大細胞ガンの占める割合は、約7%程度にとどまり、発症リスクや発生のメカニズムについて、まだまだ判明していない部分の多いものとなっています。
また、大細胞ガンはガン細胞が大きくなりやすく、進行が早いという傾向があります。
初期の段階で、咳や痰(血痰)、微熱などがみられることもありますが、他の肺ガン同様、普通の風邪と似た症状のため見逃しやすく、わかりづらいものとなっています。
肺の末梢(気管支の細い部分)に発生するケースが多いため、胸壁や胸膜に浸潤した場合には胸椎が溜まってきたり(胸水貯留)、胸部痛や呼吸困難が見られることがあります。時には、神経が侵されることにより腕の痛みやしびれ、胸や肩の痛み、顔面や上肢の浮腫などが見られることもあります。
また、扁平上皮ガンや小細胞ガンほど、喫煙との関係ははっきりしていません。
東洋医学では、肺は大腸と深い関係があると考えます
肺と大腸は、五行の木・火・土・金・水のなかの「金」の性質を持っています。
肺と大腸は、「表裏の関係」にあります。(肺は陰、大腸は陽)便通に異常がある時など、肺との繋がりが関係している事も多いのです。
■肺の働き
1.肺は呼吸を管理することから「気」と関連すると言われます
呼吸によって「清気(新鮮な空気)」を吸収し、「濁気(Co2)」を吐き出して、呼吸器を清潔に保ちながら体内と外界とのガス交換を行っています。
呼吸によって吸収された清気は、脾(消化器系)で作られた「栄養」と一緒になり、全身に散布されて臓腑は生理活動を営むことができます。
肺が気を支配している事を「宣発粛降(せんぱつしゅっこう)」作用と言います。
また肺は全身の皮膚とも関係していて、気をめぐらせることによって毛穴の開閉を調節し、発汗によって体温の調節をおこなっています。
そして外から病邪が侵入できないように体表を守る役割もあります。
2.水分代謝
先ほどの発汗による汗の排泄もそうですが、肺は水分代謝に関り体内の水を呼吸によって「腎」まで運び、尿をつくる素とします。
肺が水分代謝に関る一連の働きを「水道通調」と言います。
■大腸の作用
大腸は小腸が栄養分を吸収した後の残りカスから、余った水分を更に吸収して便に変え排泄させます。これを「伝導作用」と言います。大腸の伝導作用は、肺の粛降の助けが必要で、肺気の減退は大腸にも影響します。
肺ガンの治療法(東洋医学)
肺ガンの場合、漢方薬や自然健康食品を選ぶときはどうするのか?
東洋医学・中医学では、患者さんのタイプをいくつかにわけます。
東洋医学では気・血・水(きけつすい)といって、気力パワー、血液の循環、水やリンパ液の流れで健康が決まるといわれています。
■肝うつ、気(ストレス)の流れが悪いタイプ
ストレスが大きくかかったり、下痢をしやすかったり、栄養不足で血液を貯蔵する肝臓(西洋医学の肝臓ではなく、その周辺部やかんのむし、ストレスを含む)の働きが悪くなると、肝臓の解毒が上手くできず、気持ちを安定する事が難しくなります。
結果的に自律神経が乱れて腸内が緊張し過ぎて、便秘につながりやすくなります。呼吸か乱れたり、お腹が張ったり、ガスが臭くなったりと便秘は腸内での腐敗が進み、悪玉菌が増えてしまいます。
悪玉菌の温床では、発ガン率も高くなります。
■血液がきれいでなく、血の流れが悪いタイプ
血液がサラサラでなく、循環も悪いタイプです。血液の流れが悪いと、痛みが生じます。
体温も低くなりがちです。
体温が低いと、免疫力が低下して風邪をひきやすくなったり、他の病気にもかかりやすくなります。
■水分が滞って、体内の水の流れが悪いタイプ
体内の水分がストレスなどにより流れが悪くなると、悪い水(東洋医学では「たん」といいます。鼻やのどに詰まる「痰」とは違います)が体をめぐり、良い水の流れが滞ります。舌もむくんで厚ぼったく、歯の跡がつくこともあります。水分代謝が悪いと、腸内では下痢や便秘の原因にもなります。
■人間の健康を支える3つの柱「気(ストレス)・血液・水分」が弱って、総合的に体力が弱っているタイプ
3つともが弱っていますので、体温が低下し寒がりで、吐き気があり、お腹のはりが出て、痛みや下痢、便秘になります。
肺ガンの場合、漢方薬や自然健康食品を選ぶときはどうするのか?
同じ部位のガンでも、患者さんの状態によって各人に応じた漢方や自然食品を使いケアを進めます。
東洋医学では「薬草の働き」を上手に利用
○体質に関係なく使う薬草、ガンによく使われる生薬
- 白花蛇舌草(びゃっかじゃぜつそう)
- 半枝蓮(はんしれん)
- 冬虫夏草(とうちゅうかそう)
- 霊芝(れいし)
- 田七人参(でんしちにんじん) など
○気力パワーをつける薬草、ストレスに作用する薬草
- 朝鮮人参(ちょうせんにんじん)
- 黄耆(おうぎ)
- 白朮(びゃくじゅつ)
- 山薬(さんやく=山芋のほしたやつです)
- 甘草(甘い味の薬草 肝臓とは関係ありません)
- 大棗(たいそう 大型のプルーン、ナツメとも呼ばれます)
- 茯苓(ぶくりょう)
- 陳皮(ちんぴ)
- 青皮(せいひ)
- 枳実(きじつ)
- 枳穀(きこく)
- 香附子(こうぶし)
- 木香(もっこう)
- 烏薬(うやく) など
○体をあたためて、体の成分の新旧入れ替え(新陳代謝)を良くします
- 附子(ぶし、トリカブトの根です。少量ではとても良い薬です)
- 桂皮(けいひ、シナモン、ニッケのことです)
- 乾姜(かんきょう、しょうがを蒸して干したものです)
- 杜仲(とちゅう)
- 枸杞子(くこし。赤いクコの実のことです)
- 骨砕補(こつさいほ)
- 冬虫夏草(とうちゅうかそう)
○血液をきれいにし、流れをよくしてくれます
- 田七人参(でんしちにんじん)
- 艾葉(がいよう)
- 当帰(とうき)
- 芍薬(しゃくやく)
- 熟地黄(じゅくじおう)
- 何首烏(かしゅう)
- 竜眼肉(りゅうがんにく。中華料理で出てくるデザート。ローガンのほしたもの)
- 川弓(せんきゅう)
- 延胡索(えんごさく)
- 欝金(おうごん)
- 莪朮(がじゅつ)
- 益母草(やくもそう)
- 紅花(べにばな)
- 牛膝(ごしつ)
- 桃仁(とうにん)
- 牡丹皮(ぼたんぴ)
- 三稜(さんりょう)
- 丹参(たんじん)
- 地黄(じおう)
西洋医学的手法
肺ガンの治療方法は大まかに「外科療法(外科手術)」「放射線療法」「化学療法(抗ガン剤療法)」にわけられ、それぞれ肺ガンの種類や進行度、転移の有無によって選択される方法が異なってきます。
■外科療法(外科手術)
肺ガンの治療法として、一般的に優先されるとされているのが、外科療法(外科手術)です。
外科療法(外科手術)は、手術によって直接ガン細胞を取り除くことを目的として行われ、浸潤や転移がみられない段階の肺ガンで行われる治療法となっています。
早期の非小細胞ガンの場合は、外科療法が適応されるケースがほとんどとなっており、小細胞ガンでも限局期において選択される治療法となっています。
【外科療法の副作用】
肺ガンの手術では肺の一部を切り取るため、手術後に痛みが出たり、痰が増えたり、肺の働きが低下して息切れを起こしやすくなったりします。
特に、喫煙している方は痰の量が多く、手術後につらい思いをするだけでなく、肺炎を起こしやすくなるため、必ず禁煙しましょう。
また、口腔ケアを行って清潔に保ちましょう。手術の前から腹式呼吸の練習をしたり、積極的に体を動かして体力をつけたりしておくと、手術後の息苦しさをやわらげることができます。
【肺ガンの手術後にみられる主な合併症(術後合併症)】
- 肺炎
- 肺瘻
- 気管支断端瘻
- 声のかすれ(嗄声)
- 肺梗塞
- 脳梗塞
- 心筋梗塞
■放射線療法
放射線療法は、肺ガンの病巣に放射線を照射してガン細胞を殺すことを目的として行われる治療方法です。
一般的に放射線療法は、外科療法が行えない高齢の患者の方や、全身に転移が拡がった患者の方に対して行われるものとなっています。
また、進行速度が早く早期発見の難しい小細胞ガンにおいては、最初から選択されるケースの多い治療法でもあります。
近年は、外科療法を行う前に、ガンの病巣を小さくする目的で放射線療法が行われることもあり、化学療法と併用してガン細胞の減少効果を上げるといった治療も実施されています。
【放射線療法の副作用】
放射線療法では、ガン細胞に放射線を照射してダメージを与えます。
しかし、まわりにある細胞にも放射線があたってしまい、やけどのような症状を起こすことがあります。
通常は一時的な症状ですが、症状がひどい場合や長引く場合には、担当医に相談してください。
【放射線療法の主な副作用】
- 皮膚炎
- 放射線肺炎
- 放射線性食道炎
- 脊髄症
■化学療法(抗ガン剤療法)
化学療法は、抗ガン剤を使用した治療法です。
全身に転移が拡がった肺ガンにおいて選択されることが多く、外科療法が行えない場合に適用されるケースが多くなっています。
薬物を使用したガン治療には、抗ガン剤を用いる化学療法と、ホルモン剤を使用したホルモン療法がありますが、肺ガンの場合はガンの発症リスクに特定のホルモンが関わることがほとんどないため、化学療法が主流となっています。
この化学療法を行う場合のデメリットとして「抗ガン剤はガン細胞にだけ作用するのではなく、正常な細胞にもダメージを与えてしまう」というものがありますが、肺ガンの場合は遠隔転移が多く見られるため、他のガンよりも化学療法が用いられるケースが多いという特徴があります。
治療法を選択するのは治療を行う医師ですが、その治療方法を選択して決定するのは患者の意志です。
【薬物療法の副作用】
一般的に抗ガン剤は、細胞が分裂・増殖する過程に働きかけて、細胞の増殖を抑えます。
ガン細胞は活発に分裂・増殖している細胞なので、抗ガン剤の効果が期待されます。しかし、腸の細胞や、髪の毛を造る細胞、血液を造る細胞なども活発に分裂・増殖しているため、影響を受けやすく、様々な副作用が現れます。
副作用の現れ方は人によって様々ですが、大事なことは、以下のような症状が出たり、異変に気付いたらすぐに医師や看護師に伝えることです。
【薬物療法の主な副作用】
- 悪心
- 嘔吐
- 骨髄抑制
- 便秘
- 下痢
- 脱毛
- 肺障害
- 薬剤アレルギー
- 腎障害
- 静脈炎
- 末梢神経障害