近年、「SIBO(シーボ)」という言葉を耳にする機会が増えてきました。
正式には Small Intestinal Bacterial Overgrowth(小腸内細菌異常増殖症) と呼ばれ、小腸に通常よりも多くの細菌が棲みついてしまい、様々な消化器症状を引き起こす状態を指します。欧米では広く研究が進められており、日本でも少しずつ注目され始めています。
この記事では、SIBOについて 現代医学の視点 と 中医学(東洋医学)の視点 の両方から解説していきます。
現代医学から見たSIBO
SIBOのメカニズム
通常、小腸には大腸ほど多くの細菌は存在しません。胃酸や小腸の蠕動運動、消化酵素などの働きによって、細菌が過剰に増えないようにコントロールされているためです。ところが、何らかの理由でこのバランスが崩れると、小腸に細菌が異常に増殖し、SIBOが発生します。
主な症状
- お腹の張り(ガスの貯留)
- 腹痛、下痢または便秘
- 食後の膨満感
- 栄養吸収不良(体重減少、ビタミン欠乏など)
- 疲労感や集中力低下
特に食後すぐにガスがたまるような症状はSIBOを疑うヒントになります。
原因とリスク因子
- 腸の蠕動運動の低下:過敏性腸症候群(IBS)や糖尿病性神経障害など
- 胃酸分泌の低下:ピロリ菌感染、胃酸抑制薬(PPI)の長期使用
- 手術後の腸の構造変化:癒着や盲端形成
- 免疫力の低下や慢性疾患
診断と治療
SIBOの診断には、呼気テスト(乳果糖やグルコースを飲み、水素やメタンガスを測定)や小腸液の細菌培養が用いられます。
治療の柱は以下の通りです:
- 抗菌薬による除菌(リファキシミンなど)
- 食事療法(低FODMAP食)
- 腸の運動を改善する薬や生活習慣の調整
- 再発防止のための栄養指導
中医学から見たSIBO
中医学には「SIBO」という病名は存在しません。しかし、現代人が悩む腹部膨満、下痢や便秘、ガスの多さといった症状は、古典的な病機の中に十分説明できる枠組みがあります。
病機の捉え方
中医学では、SIBOの症状を次のように捉えることが多いです:
・脾虚(消化力の弱さ)
脾(消化吸収を担う臓腑)が弱ると、食べ物がうまく運化されずに停滞し、腸内でガスや湿(余分な水分)がたまりやすくなる。
・湿熱(消化管にこもる熱と湿気)
甘いものや油っこい食事、飲酒などで「湿熱」が腸にこもると、発酵・腐敗が進み、ガスや下痢、臭いの強い便につながる。
・肝鬱気滞(ストレスによる気の流れの停滞)
精神的なストレスや緊張が続くと、肝の疏泄作用が滞り、消化管のぜん動が乱れ、腹部の張りや便通異常を引き起こす。
治療と養生
・健脾化湿(脾を補い湿を除く)
山薬、白朮、茯苓などを用いて消化吸収を高め、腸内の停滞を解消する。
・理気和中(気を巡らせ消化を助ける)
陳皮、厚朴、香附子などでガスの停滞や膨満を改善する。
・清熱利湿(湿熱を取り除く)
黄連、黄芩、藿香などで腸内の炎症や異常発酵を鎮める。
気を付けたい生活習慣
◎脾胃(消化機能)を守る
・暴飲暴食を避け、温かい消化の良い食事を心がける
・冷たい飲み物や甘味・脂っこいものを控える
◎気の滞りを防ぐ
・ストレスを溜め込まない工夫(趣味によるストレス発散、散歩や呼吸法)
・規則正しい生活リズム
◎その他の避けたいNG習慣
・だらだら間食
・夜食
・アルコールの頻繁な摂取
・長時間の座位、運動不足
・睡眠不足、夜更かし
SIBOの生活習慣は「腸を休ませる時間をつくること・蠕動を邪魔しないこと・自律神経を整えること」がキーワードです。
現代医学と中医学をつなぐ視点
現代医学は「細菌の増殖」という原因にフォーカスします。一方で中医学は「なぜ細菌が増える環境が生まれたのか」という体質やバランスに注目します。
例えば、現代医学がいう「蠕動運動の低下」は、中医学でいう「気滞」や「脾虚」に近い概念です。また、甘いもの・脂っこいものがSIBOを悪化させる点も、「湿熱」という考え方と一致します。
つまり、両者はアプローチこそ違えど、目指す方向は共通していて、腸内環境を整え、過剰な発酵を抑えることにあります。
まとめ
SIBOは現代人に増えている新しい消化器トラブルの一つです。現代医学では「小腸に細菌が増えすぎる病態」として捉え、薬や食事療法で対処します。中医学では「脾虚」「湿熱」「気滞」などの体質的な背景を重視し、漢方薬や養生法で根本的な改善を目指します。
どちらか一方に偏るのではなく、両者を組み合わせることで、より無理のないケアが可能になります。「お腹の張りが続く」「食後すぐ苦しい」といったサインに気づいたら、ぜひ早めに専門家に相談してみてください。
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薬草の森はくすい堂 国際中医専門員 権藤
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