
「首が腫れて発熱しているが、なかなか治らない」
このような症状で病院に行くと、菊池病ではないかと言われることがあります。
激しい症状を伴いますが、検査を受けても決定的な治療方法がない疾患です。
菊池病と診断されたら、また診断されてなくとも疑わしい症状があれば、少しでも早く良くなるように漢方を検討していただけたら幸いです。
1.菊池病とは?
菊池病は、1972年に日本で初めて報告された疾患で、20~30代のアジア人女性に多く発症すると言われています。
正式名称は「組織球性壊死性リンパ節炎」といい、頸部(くび)のリンパ節が腫れるのが特徴です。
病名の由来は、この疾患を最初に報告した病理医・菊池昌弘先生の名前によるものです。
菊池病の症状は、風邪や感染症と似ている部分がありますが、特徴的なのは以下のようなものです。
- 首のリンパ節が痛みを伴って腫れる
- 発熱(38〜39度)
- 倦怠感・全身のだるさ
- 食欲不振
- 時に発疹や関節痛
- 悪寒
症状は突然現れ、1か月ほど続いて自然治癒することが多いのですが、中には回復まで2~3か月ほどかかることもあります。
また、初発から2~14年間の間に再発するケースもあります。
2.菊池病の原因は?
実は、はっきりとした原因はまだ分かっていません。
しかし、次のような説が有力とされています
- ウイルス感染説:EBウイルス、ヒトヘルペスウイルスなどが関与している可能性。
- 自己免疫説:免疫の過剰反応によって、リンパ節内で炎症を起こしているのではないかという説。
これらの説から、感染症と自己免疫疾患の中間のような性質を持つ病気ではないかと考えられています。
3.菊池病の診断方法と治療薬
(1)診断までの流れ
- 問診・触診
リンパ節の大きさ・痛みの有無を確認。 - 血液検査
炎症反応(CRP上昇)、白血球減少、LDH上昇など。 - 超音波検査(エコー)・CT検査
リンパ節の大きさや形状を確認(悪性リンパ腫との区別に有用)。 - リンパ節生検(確定診断)
局所麻酔後、針や小切開でリンパ節の一部を採取。
病理所見としては、組織球の増殖、核破砕(細胞の死骸)、好中球が少ない(細菌性リンパ節炎と異なる点)などが見られる。
症状が似ている疾患(悪性リンパ腫や結核性リンパ節炎など)との鑑別が重要なため、確定診断にはリンパ節の生検(組織検査)が必要となります。
(2)鑑別が必要な病気
菊池病と間違われやすい疾患と鑑別のポイントは以下の通りです。
- 悪性リンパ腫生検
がん細胞を確認。 - 全身性エリテマトーデス(SLE)
抗核抗体(ANA)陽性、腎障害など。 - 結核性リンパ節炎
抗酸菌検査陽性、乾酪性壊死 。 - 伝染性単核球症(EBウイルス)
異型リンパ球増加、血清抗体検査
(3)治療薬
多くの場合、治療しなくても数週間から数か月かけて自然治癒するとされます。そのため、対症療法(熱を下げる、痛みを取る)を中心に処方されます。
- 解熱鎮痛剤(アセトアミノフェンなど)
- 非ステロイド系抗炎症薬(NSAIDs)
長引く場合や症状が重たい場合はプレドニン(ステロイド薬)が用いられることがあります。
4.漢方による改善例
菊池病のようにリンパ節が腫れた状態について、中医学では数珠状の結核が連なる様子から瘰癧(るいれき)と呼びます。
瘰癧の原因としては、肝気鬱結や気鬱傷脾、脾失健運、痰湿内生などが考えられます。
症例①
福岡市在住の33歳女性。2週間前から首にポコポコとしたしこりができるようになり、ある朝に突然39.1℃の発熱。検査を受けると複数のリンパの腫れが確認され、治す方法はないと言われる。熱は39℃前後が続くが、ロキソニンを飲むと一時的に37℃まで下がる。
布団を何枚来ても震えるほどの寒気と暑すぎて布団を剥がすのを繰り返す。高校生の頃にも似たような症状が出たことがあり、その時も菊池病だった可能性あり。
免疫を調整する働きのある漢方など2種類を処方。3日経つと熱は下がり、首のしこりも小さくなる。職場に復帰することができたが、漢方の服用を止めると首のしこりが再発したため、2か月ほど同処方を継続。その後は首のしこりや発熱の再発なし。
症例②
愛知県在住の40代女性。首のリンパ節が腫れて38℃台後半の発熱が続き、2週間経っても治らない。耳鼻科と大学病院で検査を受け、おそらく菊池病ではないかと診断される(生検を受けようとしたタイミングでしこりが小さくなったため確定できず)。
血液検査も大きな問題なし。首の横を中心に顎下、脇の下が腫れている。3か月前に大きな手術を受けており、以前からストレスが溜まる環境が続いていた。
カロナールを服用しながら、気の巡りと水分代謝を改善する漢方を併用。4日で高熱は出なくなり、しこりも小さくなった。その後、2か月間は同じ処方を継続して再発なし。
5.まとめ
菊池病について調べると、多くの場合は自然に回復するとされています。文字にするとそうなのかもしれませんが、実際に発症した患者様の声を聞くと「これが1か月も2か月も続いたら耐えられない」と仰られるほど、辛い症状が続きます。心身ともに大きく疲弊するために後遺症が出ることもあります。
ステロイドが有効なこともありますが、生検による確定診断後に処方されることが多く対処に時間がかかるのも問題です。
原因不明の病気ではありますが、東洋医学では病名がついていない段階から治療することができますので、早い段階で漢方をお試しいただけたらと存じます。
再発する可能性もありますので、予防のために体質改善することも有効です。
電話相談やオンライン相談も承っておりますので、遠方の方でもお気軽にお問合せください。
6. 一緒に読まれている記事
参考資料
- J-STAGE「菊池正弘による論文」(https://www.jstage.jst.go.jp/article/naika1913/91/7/91_7_2057/_pdf/-char/ja)
- 日本小児感染症学会「組織球性壊死性リンパ節炎の病理と臨床」(https://www.jspid.jp/wp-content/uploads/pdf/02502/025020180.pdf)
- JHospitalistNetwork「菊池病~…疑いのapproach~」(https://hospi.sakura.ne.jp/wp/wp-content/themes/generalist/img/medical/jhn-cq-tokyojyoto-180628.pdf)
薬草の森はくすい堂 国際中医専門員 権藤
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