
福岡県では、百日咳が過去最多のペースで増加しているそうです。
百日咳は、その名の通り長引く咳が特徴の感染症で、乳幼児や高齢者では重症化するリスクがあります。近年、成人の患者も増えており、改めて注目されている病気です。
連休で移動も増える時期ですので、百日咳の概要と対策法などについて解説していきます。
1. 百日咳とは? 原因と感染経路
百日咳は、百日咳菌(Bordetella pertussis)によって引き起こされる感染症です。主な感染経路は、患者の咳やくしゃみによる飛沫感染です。感染力が非常に強く、家庭内や学校・保育所で集団感染することもあります。
百日咳の流行状況(日本と世界)
日本では、四種混合ワクチン(DPT-IPV)の定期接種により患者数は減少しましたが、成人の感染者が増加傾向にあります。
世界的には、ワクチン未接種の地域で流行が続いており、年間約16万人の乳幼児が死亡していると報告されています。
2. 百日咳の症状~特徴的な咳の経過~
百日咳は、症状の進行によって3つの段階に分けられます。
① カタル期(1~2週間)
- 風邪のような症状(鼻水、くしゃみ、軽い咳)
- この時期は感染力が最も強い
② 痙咳期(2~6週間)
- 特徴的な「スタッカート咳」(短い咳が連続して出る)
- 咳の後に「ヒュー」という笛のような音(whooping)が聞こえることがある
- 乳児では、無呼吸発作やチアノーゼが起こることも
③ 回復期(数週間~数か月)
- 咳は徐々に軽くなるが、長引くことがある
成人の場合は症状が軽く、風邪と間違えられやすいため、感染拡大の原因になることが問題視されています。
3. 百日咳の合併症~重症化しやすい世代は?~
特にリスクが高いのは、生後6か月未満の乳児です。
- 肺炎(約20%)
- 脳症(けいれんや意識障害)
- 無呼吸発作(突然呼吸が止まる)
- 成人では、咳による肋骨骨折や失神などの報告もあります
4. 百日咳の検査と治療法
診断方法
- PCR検査(鼻の奥の粘液を採取)
- 血液検査(抗体を調べる)
- 培養検査(菌を培養して確認)
風邪と間違えられやすいため、長引く咳(2週間以上)の場合は医療機関へ。
治療法
- 抗生物質(マクロライド系)は早期に投与すれば症状を軽減
- 咳対策:加湿や水分補給が有効
- 重症例:入院が必要な場合も
抗生物質は発症早期(カタル期)に使わないと効果が低いため、早めの受診が重要です。
5. 百日咳の予防法~ワクチンと感染対策~
ワクチン接種は最も効果的な予防策です。
- 日本では、四種混合ワクチン(DPT-IPV)が定期接種(生後2か月~)
- 標準スケジュール:生後2・4・6か月、1歳半で接種
- 追加接種(11~12歳):免疫力維持に重要
- 成人も10年ごとの追加接種が推奨
その他の感染予防策
- 手洗い・うがい
- マスク着用(特に乳児と接する場合)
- 患者との濃厚接触を避ける
6. 百日咳の中医学的な対策
漢方で対処する場合は、百日咳だからこの漢方というより、症状に合わせて漢方薬を選ぶ必要があります。
① 風寒タイプ
- 小青竜湯:寒気、鼻水、くしゃみ、顔のむくみなど
- ヒューゲン錠duex:身体が冷えて鼻水やくしゃみがある時
- 麻黄附子細辛湯:冷え症の方の咳に
② 風熱タイプ
- 銀翹散:発熱や喉の痛み、黄色い痰が出る時に
③ 痰熱タイプ
- 麻杏甘石湯:肺に熱がこもり激しい咳が出る時に
- 麻杏止咳顆粒:激しい咳と一緒に色のついた痰が出る時に
④ 陰虚タイプ
- 麦門冬湯:咳が長引いたり、空咳が出る時に
おわりに
百日咳は抗生物質が効くのは感染初期に限られます。その後は漢方による対策が可能ですが、感染してからの時期と体質、症状を見極める必要があります。
お困りの場合は、早めにご相談くださいませ。
参照文献
- ① 厚生労働省「百日咳について」
- ② 国立感染症研究所「百日咳発生動向」
- ③ CDC「Pertussis (Whooping Cough)」
- ④ WHO「Pertussis Fact Sheet」