映画『働く細胞』が12月13日から上映されていますね。
筆者は何年も前に漫画で読みましたが、体内のことが視覚的に良く分かるのでお勧めです。かなり勉強になるので、子供から大人までぜひ観ていただきたいですね。風邪ひいた時やケガして血が出た時に体の中で頑張ってくれている細胞たちに感謝できるようになります。
そんな映画上映のタイミングに、患者様から「70代の母が白血球の値が標準値を下回っているので、何か良い漢方はありますか?」と質問をいただきました。
働く細胞でいうと、佐藤健さんがダブル主人公として好中球を演じていますが、好中球も白血球の内の1つ(1人?)になります。
体内で悪者を退治する好中球を始めとした白血球たち。彼らを増やすにはどうしたらいいのか解説していきたいと思います。
1.白血球とは
白血球は血液の成分の1つで、血液は他に赤血球(映画では永野芽郁さん)や血小板などの血球成分と、血漿(けっしょう)から成り立ちます。
白血球は、顆粒球(好中球・好酸球・好塩基球など)、単球、リンパ球⦅B細胞、T細胞、NK(ナチュラルキラー)細胞など⦆に分類され、主に免疫を担当する細胞群です。
細菌やウイルスなどの異物が体内に侵入してくると、殺菌物質を放出し、異物を取り込むことで無害化します。例えばリンパ腺が腫れることがありますが、これは風邪をひいたとき等にリンパ節に敵をおびき寄せて、リンパ球と好中球が盛んに戦っている状態です。
血液検査では白血球(WBC)は、4000~10,000個/mm3が正常値になります。低すぎることも問題ですが、細菌感染やストレス、ケガ、アレルギー疾患などで多くなる傾向があります。また、白血球の数値が15,000個/mm3以上になると白血病が疑われます。白血球の寿命は10時間であり、120日間サイクルで生まれ変わる赤血球と比べると作られるサイクルが短いのも特徴です。
2.働く細胞でいうと
文字だと分かりにくいという方は、働く細胞のキャストで考えていただくと分かりやすいかもしれません。
まず、主演の佐藤健さんは白血球の1つ好中球を演じています。白血球なので真っ白です(白塗りでもかっこいい…)。白血球というのは病原菌などと闘う軍隊のようなものですが、好中球は白血球の6割を占めるエース的な役割です。
ただ、好中球は敵が抗体によって識別されてないと敵として認識することができないので、リンパ球の支援が必要です。映画では染谷将太さんがヘルパーT細胞というリンパ球の一種を演じています。好中球(佐藤健さん)や好酸球が現場で戦う一般職であるとすれば、指令を出すヘルパーT細胞(染谷将太さん)などのリンパ球はエリートになります。だからエースであるとともに一般職である佐藤健さんはいつも最前線で闘っていますね。
ちなみに佐藤健さんが演じる好中球などの顆粒球には「好」という字が入りますが、これは染まりやすい色素を意味していて、酸性の染色液に染まりやすい細胞を「好酸球」、塩基(アルカリ性)の染色液に染まりやすい細胞を「好塩基球」、中性の色素で染まりやすい細胞を「好中球」と名付けられています。
白血球が作られる過程
白血球が少ないというのはどのような状態から起こるのかを考えるために、白血球を始めとした血液がどのように作られるかを解説していきます。
白血球は、以下の過程を経て作られます。
(1)骨髄にある造血幹細胞が細胞分裂を繰り返します。
血液を作ることを造血と言います。この造血を行っている場所は主に骨髄です。骨髄は骨の中心部にあります。
(2)造血幹細胞が各血球に成長する
骨髄には造血幹細胞と呼ばれる細胞があらゆる血液細胞(赤血球、白血球、血小板)に変化していきます。この造血幹細胞が成長して各血液細胞に分かれていくことを分化と呼びます。
また、造血幹細胞は自分と同じ性質をもった細胞を繰り返し作る「自己複製能」を持っています。しかし、70歳を過ぎると造血幹細胞の活動が低下し、増殖する能力も造血する能力も低下すると言われています。
4.がん治療と白血球
老化以外にも白血球が減少することを多く目にすることがあります。それががん治療です。
抗がん剤を使用するとがん細胞だけでなく骨髄もダメージを受けることで造血機能が低下します。抗がん剤は分裂が活発な細胞に強く影響するため、あらゆる血球成分に分化していく骨髄もその影響を受けやすく、白血球だけでなく赤血球や血小板も減少することになります。抗がん剤治療を行うと7~10日目頃に血球成分が減り始めます。
5.中医学から白血球を考える
では、中医学で白血球の減少をどのように考えるか解説していきます。
(1)衛気虚
まず、中医学では心や体を動かすエネルギーをまとめて「気」と呼びますが、その中でも外敵と闘い体を守る働きのことを「衛気」と呼びます。
衛気が不足しがちなタイプである「衛気虚」の特徴として、
☑疲れやすい
☑風邪をひきやすい
☑アレルギー体質
☑季節の変わり目や気温の変化に弱い
☑汗をかきやすい
ウイルスや細菌を攻撃する働きを持つ白血球が少ないのは、中医学ではこの「衛気虚」であると考えるため、衛気を増やす生薬が入った漢方を用います。
(2)腎虚
中医学では、生殖・発育・老化と関りが深いのは五臓の1つの「腎」であると考えます。その腎には精といって、生命の全てを支える根源的な物質が蓄えられていると考えます。この腎精は燃えるロウソクによく例えられるように、年齢を重ねるとロウソクの蝋の部分は減っていき炎も小さくなっていきます。
加齢や過労によってこの腎精が不足することで、様々な老化現象が起きるように白血球を作る働きもまた落ちていくと考えられます。
「腎虚」タイプの特徴として、
☑足腰がだるい
☑健忘
☑耳鳴り、難聴
☑排尿障害(尿の出が悪い、尿が近い、残尿感)
この腎を補うための漢方薬を使う必要がありますが、特に動物性の生薬を用いて腎精を補うことが重要です。漢方の世界では、動物由来のものを「血肉友情の品」と言いますが、植物の生薬よりも動物性の生薬の方が血肉に変わりやすいということです。
6.まとめ
白血球というのは、体を守る大事な免疫の元になります。減少すると病原体に感染しやすくなるため注意が必要で、できるだけ正常値の範囲に保ちたいところです。
赤血球などと比べて作り変えるサイクルが非常に短いため、漢方を使って割と早く効果が表れることがあります。白血球の数値が低いというのは、実は漢方治療と相性がいいのです。
年齢とともに白血球が減少して検査を勧められている、抗がん剤治療によって白血球が減少して困っている方がいらっしゃいましたら、ぜひ漢方薬をご検討くださいませ。
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薬草の森はくすい堂 権藤