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乳がんの基礎知識と中医学的ケア

1.乳がんの基本構造と発生部位

乳がんは、乳管や小葉の上皮組織から発生する悪性腫瘍です。現代社会において、乳がん患者数は確実に増加しており、女性の一生で9人に1人が発症すると言われるほど身近な病気となっています。しかし、患者数が増加する一方で、医療技術の進歩により死亡率はそれほど上昇していないのも事実です。本記事では、乳がんの基礎知識から最新治療法、中医学的アプローチまで、患者さんとそのご家族に知っておいていただきたい情報を詳しく解説します。

目次

  1. 乳がんの基本構造と発生部位
  2. 乳がんの生存率とリスク要因
  3. 乳がんのサブタイプ分類
  4. 乳がんの病期(ステージ)と治療方針
  5. 中医学的な乳がんのケア
  6. まとめ
  7. 一緒に読まれている記事

1.乳がんの基本構造と発生部位

乳房の組織は、母乳を作る場所である「小葉」と母乳を乳頭まで運ぶ管である「乳管」が存在します。乳がんはこれらの部位の上皮細胞から発生します。

  • 乳管がん:乳管の内側を覆う上皮細胞に発生。全乳がんの約90%を占めます。
  • 小葉がん:小葉の上皮細胞に発生。全乳がんの約10%です。

乳がんの発生頻度を部位別に見ると、乳房の上外側が約50%、上内側が約25%、下内側約10%、下外側約10%、乳頭部5%となっています。

2.乳がんの生存率とリスク要因

(1)乳がんの生存率

早期発見ができれば非常に高くなり、進行が進んだとしても他のがんと比較すれば生存率が高いのが特徴です。

  • ステージⅠ期:5年生存率99.7%、10年生存率99.1%
  • ステージⅣ期:5年生存率37.2%、10年生存率16.0%

発症年齢のピークは30~70代と幅広く、近年では若年層の罹患率も上昇傾向にあります。

(2)リスク要因

乳がんの発症には様々な要因が関与しています。主要なリスクファクターを詳しく見ていきます。

①ホルモン要因

乳腺はエストロゲンに依存した組織であり、ホルモンの刺激を受け過ぎると乳がんのリスクが上昇します。

女性ホルモンの種類は、卵巣由来のE1、副腎由来のE2、脂肪組織由来のE2があります。出産経験がなく、母乳を上げていないと女性ホルモンに晒される期間が長くなります。また、初潮が早いことや閉経が遅いことも女性ホルモンに晒される期間が長くなるためリスク要因となります。

②家族歴と遺伝的要因

母親が乳がんの場合、娘の罹患率は約3倍に上昇します。そうした遺伝子を持つものを遺伝性乳がん卵巣がん症候群(HBOC)と呼び、200~500人に1人が該当すると言われています。特に遺伝性の乳がんに関連するのが「BRCA1」「BRCA2」という2つの遺伝子です。BRCA遺伝子自体は誰もが持っているものですが、正常なBRCA遺伝子はDNA修復機能を持っていますが、病的変異があると修復できず癌化します。

ハリウッド俳優のアンジェリーナ・ジョリーさんはBRCA1遺伝子が変異していたため、予防的乳房切除で発症リスクを87%→5%に低減させたと言われています。

③その他のリスクファクター

  • 良性乳房疾患:乳腺症はリスク3〜4倍、乳腺乳頭症についても癌化リスクが高いとされています。繊維腺腫については上皮と関係がないため癌化することはありません。
  • 食事要因:高脂肪食は乳がんの発生率が高いとされていて、欧米人はアジア人より発症率が高くなっています。アジア人が欧米に移住して食事が欧米化するとリスクが上昇することから、人種の違いよりも食事の要因が大きいと考えられています。炭水化物と食物繊維の摂取不足は乳がんの発生率を高めます。

3.乳がんのサブタイプ分類

サブタイプ分類は、薬物療法を行う際にどの薬が適しているかを選ぶ上で参考にするための分類です。がん細胞の中にあるタンパク質を調べることで、便宜的な分類を行い、治療方針を決定します。調べるタンパク質は、ホルモン受容体、HER2(ハーツー)、Ki-67で、これらが陽性か陰性なのかで分類していきます。検査の内容は以下の通りです。

(1)検査項目

①ホルモン受容体(レセプター)

ホルモン受容体というのは女性ホルモンと結合するタンパク質で、ホルモンをキャッチするアンテナのようなものです。ホルモン受容体が陽性の場合、エストロゲンやプロゲステロンという女性ホルモンががん細胞の増殖を促すので、これらのホルモンの働きを阻害するホルモン療法が有効な治療法となります。乳がん全体の約70%がホルモン受容体陽性乳がんとされています。

②HER2

がん細胞の増殖を促すタンパク質「HER2」が乳がん細胞表面に多く発現している状態がHER2陽性乳がんです。このHER2が陽性であれば HER2タンパクを標的とする抗HER2療法が有効となります。乳がん全体の約15~20%がHER2陽性乳がんとされています。

③Ki-67

Ki-67は細胞の増殖能力の指標となるタンパク質です。Ki-67検査では、Ki-67が作られているがん細胞がどの程度あるのかを調べます。値が高いほど、転移や再発の可能性が高くなります。Ki-67の値が高い場合には抗癌剤が有効な治療法となります。

(2)サブタイプ分類

ホルモン受容体とHER2の陰性陽性、Ki-67が低いか高いかの3項目により、以下の5種類に分類します。

参照:国立がん研究センター

4.乳がんの病期(ステージ)と治療方針

(1)病期(ステージ)

乳がんの治療は、病期によって大きく異なります。

  • Ⅰ期・Ⅱ期:手術が第一選択(※)
  • Ⅲ期:薬物療法 ⇒ 腫瘍を縮小できれば手術や放射線療法
  • Ⅳ期:薬物療法が中心

※以前は「乳房全切除術」が主流でしたが、現在では治療法の進歩により、「乳房部分切除」や「同時再建手術」が増加しています。

(2)乳がんの薬物療法

①ホルモン療法

ホルモン受容体陽性の乳がんに有効な治療法です。内分泌細胞からホルモンが分泌され、乳がん細胞の受容体に結合することで、がん細胞が増殖します。

エストロゲン受容体、プロゲステロン受容体が陽性であれば抗がん剤よりも有効であるため、乳がん治療にはホルモン治療がよく用いられます。一方で陰性であれば有効率10%以下でほとんど効かないとされています。

副作用としては、ホットフラッシュ(ほてり)、関節痛、骨粗鬆症、脂質代謝異常などが現れることがあります。

タモシキフェンやアロマターゼ阻害薬といった抗エストロゲン薬を使用します。

②分子標的治療

分子標的薬は、がんの増殖に関わるタンパク質や、栄養を運ぶ血管、がんを攻撃する免疫に関わるタンパク質などを標的にしてがんを攻撃する薬です。がん細胞表面の分子と結合する抗体薬(注射剤)、がん細胞中の分子と結合する小分子薬(経口薬)などがあります。

  • ハーセプチン(トラスツズマブ):HER2阻害薬で、乳がん細胞膜のHER2と結合し、がん細胞の増殖を抑制します。注射剤です。
  • ベージニオ(アベマシクリブ):サイクリン依存性キナーゼ阻害薬で、CDK4/6を抑制し、がん細胞の増殖を抑制します。経口薬です。
  • キイトルーダ(ペムブロリズマブ):免疫チェックポイント阻害剤で、免疫ががん細胞を攻撃する力を保ちます。トリプルネガティブ乳がんに使用されることがあります。
  • オラパリブ(リムパーザ):PARP阻害剤で、DNA修復機能を持つがん細胞を選択的に攻撃します。BRCA1/2遺伝子陽性時に使用されます。

5.中医学的な乳がんのケア

中医学では、乳がんを「正気(体の抵抗力)の不足」と「邪気(病的要因)の停滞」として捉えます。治療段階に応じたアプローチがあります。

(1)手術前

手術に耐えられる体を作るために補気養血・扶正袪邪の漢方を用いる。

方剤:帰脾湯、半枝蓮配合食品

(2)手術後

手術により消耗された気血を補い、臓腑機能を回復させ、再発を予防するために益気健脾・養血解毒の漢方を用いる。

方剤:補中益気湯、婦宝当帰膠、香砂六君子湯、半枝蓮配合食品

(3)放射線治療

放射線は皮膚炎や粘膜障害、肺炎、胸焼けなどの副作用が起こりますが、中医学では「熱毒」と捉え、清熱解毒や養陰潤肺といった方法で対応します。

方剤:半枝蓮配合食品、麦門冬湯、百合配合食品、半夏厚朴湯

また、中国ではレンコンのすりおろしで粘膜を保護することで食事の痛みを和らげます。

(4)抗癌剤副作用の中医学的ケア

抗癌剤はがんだけでなく、新陳代謝の早い細胞を抑制します。共通してみられる副作用には以下のようなものがあります:

  • 骨髄抑制(白血球減少・赤血球減少・血小板減少)
  • 皮膚障害(脱毛)
  • 消化管障害(口内炎、吐き気など)

具体的な対応:

  • 白血球が低い:補中益気湯(気虚)
  • 貧血症状:帰脾湯(補気補血)
  • 全体的な血球低下:補腎養血薬
  • 嘔吐(タイプ別):温胆湯、香砂六君子湯、半夏厚朴湯、開気丸
  • 口内炎:急性→清熱瀉火、慢性→知柏地黄丸

治療薬ごとの中医学的対応:

  • ホルモン療法:杞菊地黄丸、逍遥散(肝気鬱結)、三七人参併用で肝機能障害など軽減
  • ハーセプチン:辛涼解表薬で発熱や嘔吐に対応/生脈散、天王補心丹で動悸や息切れに対応
  • ベージニオ:藿香正気散、健脾散、参茸補血丸、肺陰補養、麻杏止咳顆粒、活血薬
  • キイトルーダ:皮疹には清熱解毒、下痢には健脾化湿

6.まとめ

乳がんは早期発見であれば治癒率の高いがんであり、定期的な検診と自己検診が何より重要です。

また、現代医学治療と中医学的アプローチを組み合わせることで、治療の副作用軽減やQOL(生活の質)の向上が期待できます。治療が終わった後も、再発予防のための生活習慣改善や定期的なフォローアップが欠かせません。

最新の治療法は日進月歩で進化していますので、主治医とよく相談し、自分に最適な治療法を選択されてください。

そして、心と体のバランスを整える中医学的アプローチも、乳がんとの闘いの強い味方になってくれます。

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参考文献

薬草の森はくすい堂 国際中医専門員 権藤
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