漢方薬の選び方
漢方薬は、東洋哲学のもと作られています。
私たち現代人は、東洋的なものの考え方に触れる機会が減り、西洋哲学のもと、ものを考えるようになってきています。
東洋的なものの考え方に馴染みがなくなってしまったため、漢方薬をどのように選んでよいのか、どんどん分からなくなってきてしまっているのが現状です。
馴染みがない分、すごく難しく感じてしまうのですが、漢方薬は何千年という歴史の中で、様々な東洋哲学を吸収し、すごく大系学的にできているのです。実はとても理にかなっていて、知ってみるとなかなか面白い学問だったりします。
このページでは、漢方薬を選ぶときに、どのような考えのもとに選ばれているのかを簡単に説明します。
まず漢方薬は、大きく分けて4つの考え方が組み合わさってできています。
- ①証(しょう)
- ②気血水(きけつすい)
- ③陰陽(いんよう)
- ④五行(ごぎょう)
1.証とは?
証が薬を選ぶときに、一番の基本になります。
これは「実証(じっしょう)」と「虚証(きょしょう)」に分かれています。
西洋的なものの考え方だと、実証が健康でよいととらえがちですが、漢方の世界では、どちらがよいということはありません。
実証は大木、虚証は柳にたとえられたりします。
これは、大木は少々の風では揺らがないが、台風のような風ではポッキリと折れてしまう。しかし、柳はちょっとした風でも揺らいでしまうが、どんなに強い風が吹いても、しなって耐え忍ぶことができる。
これらのたとえで分かる通り、どちらにも一長一短があるということです。
- ・体力がある
- ・筋肉質でガッチリ
- ・血色がよく、肌ツヤがある
- ・大きくて野太い声
- ・胃腸が強くて便秘気味
- ・暑がり
- ・体力がなくて弱々しい
- ・細くて華奢
- ・顔色が悪くて肌が荒れやすい
- ・細くて小さな声
- ・胃腸が弱くて下痢をしやすい
- ・寒がり
2.気血水とは?
東洋哲学では、人間の体は気と血と水で出来ていると考えています。
これらは、どれが失われていてもよろしくなく、すべてが満たされた状態が、本来の正しい姿です。
健康が損なわれていくと、気・血・水のどれか(あるいは複数)が、良くない状態になっていると考えて、それらを良い状態にする漢方を選びます。
3.陰陽とは?
東洋哲学では、人間だけではなく、すべてのものが陰陽の性質のどちらかを持っていると考えます。
また、陰陽のバランスがぴったりそろっている状態を太極といいます。
漢方の世界でも、太極の状態がもっとも健康と考えます。
女性が陰に分類されていますが、これは、陽が不足しがちな性質ということで、これを補うような漢方を選ぶことになります。
4.五行とは?
漢方では、五臓を木火土金水(もっかどごんすい)にあてはめ、相克という考え方を適用します。
五臓は肝・心・脾・肺・腎を五つを指し、漢字が同じですが、肝が、西洋医学で言う肝臓そのものを指すわけではありません。この五臓(内臓)が、人間のすべての部位のどこかを司っていると考えています。
病状からこれら五臓のどこか(あるいは複数)が、不調をきたしていると判断して、選薬します。
五行では、五臓の不調が、五行の多寡により発生すると考えますので、それを漢方薬で足したり引いたりします。
以上のように、4つの東洋哲学を組み合わせながら、その人に合った漢方薬を見つけていきます。
上記の説明からわかる通り、漢方はバランスをとることを、とても重要視しています。
西洋医学では、今出ている症状にのみ注目しますが、漢方の世界では、それが何によってもたらされているのかに注目します。
病気(不調)とは、どこかのバランスが崩れていることにより発生していると考えているので、そのバランスをとることで、主な症状のみならず、体の様々な不調がよくなっていったりします。
よく漢方薬は体質改善の薬だ、などといわれる所以は、こうした考え方のもと、体のバランスをとる薬の選び方をしているからといえるでしょう。